海外宗教事情5 フランス版『聖☆おにいさん』

これまで数回にわたり、『ドラゴンボール』や『ドラゴンクエスト』などを通じて、アメリカが実は宗教色の強い国であるというのを紹介してきました。

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十字架を描くのもはばかられるわけですから、おそらくこんなマンガ↓はアメリカでは今後も翻訳出版されることはないでしょう。

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聖☆おにいさん

ブッダとイエスが東京の立川の安アパートで、日本での生活を満喫するという内容のこのマンガ。このサイトでは、アメリカマンガ界最大手で『SHONEN JUMP』などを発売している Viz Media の人が

「絶対アメリカに持ってこられないマンガ

と呼んだということが紹介されています。

しかし! 世界は広い! 同じキリスト教国でも、果敢にもこれを翻訳出版した国がありました! その国とは…

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フランス!

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↑フランス版『聖☆おにいさん』

タイトルは 『Les Vacances de Jésus & Bouddha』(イエスとブッダの休日)。去年3月に発売されたもので、発売後さっそく手に入れてみました。

実はフランスは政教分離が徹底している国。アメリカも政教分離を謳っていますが、フランスはさらに徹底していて、2004年には「宗教シンボル禁止法」と呼ばれる法律が成立し、公共の場でイスラム教徒の女性が顔を覆うブルカが禁止されたことは、日本でも話題になりました。しかし、これはイスラム教シンボルだけを禁止するわけではなく、池上彰の著書によれば、キリスト教徒も学校など公共の場で十字架のネックレスのように特定の宗教を表すものを身につけていてはいけないそうです。かつて魔女狩りをやっていた国とは思えませんね。ジャンヌ・ダルクもビックリ!

さらに言えば、フランスは日本のマンガに対してすごく理解のある国。特にここ10年ほどでの日本のマンガの浸透具合は、スペイン、イタリアと並び、ヨーロッパでも1、2を争うほどです。さすが芸術の国ですね。これは黒歴史でお願いします。

こんな風に果敢にも神を題材にしたマンガを翻訳出版してしまう度胸ある国ですが、そんなフランスでもさすがに日本のまんまというわけにはいかないようで、多少ですがおそらく意図的であろう修正箇所があります。

まず、上の日本版と比べてもらえればわかりますが、表紙のイラストのブッダとイエスの立ち位置が違います。この理由はわかりませんが、なにか立ち位置に意味があるんでしょうか? また、Tシャツの文字が変わっているのもわかると思います。イエスの「ジーザス」が「Doux moi-même(かわいい私)」となっていますが、意味はよくわかりません。キリスト教関係の言葉なのでしょうか? 

まあ、Tシャツの文字なんかは大した問題じゃないでしょうが、やはりイエスに対して無礼になりそうなところはセリフが変えられているシーンがいくつかあります。

例えば、イエスのことを「わがまま」と呼ぶシーン。

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このセリフが、フランス版ではこのように変えられていました。

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Et plus c'est toujours toi qui as les meilleures idées!

英語に直せば And it's always you who have the best ideas. つまり、「それに、いつもいいアイディアを出すのは君のほうじゃないか」というセリフに変えられており、イエスのことを「わがまま」とは言わなくなっています。

また、イエスとブッダが2人でお祭りに行きはしゃぐ話。浮かれすぎたイエスに、ブッダが「完全に君は調子に乗った地元のにーちゃんだったよ……」と言います。

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このセリフ、フランス版ではこう変えられていました。

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Oui, je me sens vraiment comme un terrien qui se serait un peu laissé emporter.

日本語に訳せば、「うん。私は、まるでちょっと調子に乗った地元民になったみたいな気がしたよ

つまりこのセリフ、イエスのことを「調子に乗った地元のにーちゃん」と言っているのではなく、ブッダが自分のことを「調子に乗った地元民」と言った事になっているわけですね。おそらくこれは誤訳ではなく、イエスに対して失礼過ぎないようにするためでしょう。

細かい変更はあるとはいえ、キリスト教国でありながらこれを翻訳出版したフランスに敬意をもつと同時に、何にも考えずにこういう本を出版できる日本のおおらかさを改めて感じるのでした。

余談ですが、どういうわけかイギリスの大英博物館の日本コーナーに『聖☆おにいさん』が展示されていたらしいです(紹介記事はこちら)。それにしても、大英博物館には日本コーナーがあって、さらにマンガコーナーがあるのか…! 行きてー!!

「MANGA王国ジパング」は、ネット上の「MANGA博物館」になることを目指します!

ではまた!


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この記事へのコメント

名無し
2012年03月12日 19:05
このまんがは海外に出ないと思ってたので、

是非フランス人の感想など聞きたいです。
名無しmkII
2012年03月12日 19:14
昔「黒のもんもん組」という少女漫画があって、そこではゴータマさん&鬼コンビvsキリスト&悪魔コンビでプロレスを展開してたよw
サザえもん
2012年03月12日 21:57
コメントありがとうございます。

現在フランスアマゾン(http://www.amazon.fr/vacances-J%C3%A9sus-Bouddha-1/dp/2351425871/ref=cm_cr_pr_product_top)では星3.5ですね。宗教をギャグにしていることを絶賛する人もいれば、当然のこと、それを批判する人もいるようです。

『黒のもんもん組』は初めて聞いたのですが、かなり前衛的なギャグマンガだったらしいですね。アマゾンで手に入るようなので、読んでみたいと思います。
むこうずね
2012年03月16日 21:54
イエスが馬鹿にされる言動が無くなってると考えていいのでしょうか?
このマンガには逆にイエスがブッダにツッコミをするシーンも結構有ったはずですがそちらはそのままなのでしょうか?
仏訳版ではイエス=ブッダの力関係ではなくイエス≧ブッダになっているということですか?
サザえもん
2012年03月16日 23:41
コメントありがとうございます。

別段「イエス≧ブッダ」というわけではないと思います。イエスが馬鹿にされる言動が全くなくなっているのではなく、わずかにイエス関係の台詞が柔らかいものになっている程度です。イエスとブッダの関係が変わるほどのものではないと思います。
むこうずね
2012年03月17日 22:32
把握しました。ありがとうございます^^
名無し
2012年04月04日 02:57
一応フランスは(欧州では)一番無神論者が多い国との統計が出てるね
まぁ日本みたいに「興味なし」と言う意味での無神論ではなく
「神なんかいない!」と言う意味での本来の無神論だから、やっぱり宗教に囚われてるんだろうな
通りすがり
2012年04月12日 13:16
宗教は古いほうが寛容といわれるように
国が古いほうがここらへんも緩くなるのでしょうかね
…でも確かに新興国の方が規制は強いイメージがあります
う~ん
2012年05月02日 04:44
なんかブッタとイエスの距離感を感じちゃうなw
匿名
2012年05月31日 19:52
最初のコメの人 以下で検索すれば海外反応系ブログで記事にされてますよ

フランス人「抗うつ効果がある気がする」聖☆おにいさん、フランスの反応
名無し
2012年05月31日 22:06
どの国にもタブーはあるよ
日本でも天皇を皮肉る漫画やコメディは絶対出てこないでしょw
2012年05月31日 22:17
フランスは啓蒙主義(神概念抜きの政治的宗教)の本場。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%95%93%E8%92%99%E6%80%9D%E6%83%B3

上の人も言ってるけど、日本人から観ると、ある種宗教的に感じる事があっても不思議じゃない。
無神論的なのであって、無宗教的とは言えない気がする。
2012年05月31日 22:56
Doux moi-mêmeは多分doux Jésus、英語ならsweet jesusとかsweet lordということで賛美歌やゴスペルで使う表現のことではないかと
2012年05月31日 23:23
アクサンテギュが文字化けしちゃいました。jesusのeの上に点がついてます
 
2012年05月31日 23:53
アメリカのシンプソンズで天皇をネタにした回が日本じゃ放送されなかったみたいに
どの国でもおおらかな部分とそうでない部分はあると思う
 
2012年06月01日 01:35
宗教シンボル禁止法とかそれはそれで
狩っている対象が今度は宗教側になった感じでなんだかなぁ・・・って感じ
もっとファッションの一部程度の認識のおおらかさは欲しいね

とは言え好きな漫画が海外でも出てるのは嬉しいね!
反応も気になるところです
 
2012年06月01日 10:41
んだな。天皇陛下のギャグ漫画もできたら日本の漫画業界の表現の自由が実証されるんだと思うよ
 
2012年06月01日 12:55
イエス様を馬鹿にすることが出来ないキリスト教国。
天皇陛下ネタは褒めるものでも暗黙的に禁止されてる日本。

日本の場合は、天皇陛下を褒める(擁護する)人より批判する人間(反日な国含め)の方が圧倒的に多いからなんだろうけどね~
無関心な人が一番多いけど。。。
あああ
2012年06月01日 14:40
そうかな? テレビで「今日の皇族」みたいな番組もやってるし、逆に『美味しんぼ』の雁谷哲が『天皇と日本人』っていう天皇制反対の本も出しているし、『はだしのゲン』でも天皇を戦争犯罪者として罵っている。

少なくとも、天皇を褒めるものでも暗黙的に禁止されてもなければ、褒める人より批判する人の方が圧倒的に多いってことも無いと思う。天皇自体はタブーでもなんでもない。

ただ、天皇をギャグとして扱うのだけは、ほとんどタブー視されている。それはやったら100%右翼に目をつけられるからってのもあると思う。

でも、それは明治以降、天皇が現人神とされて以降の話で、それ以前の、例えば平安朝の天皇をギャグマンガに出しても、恐らくよほどの右翼以外は問題視しない。少し極端かもしれないけど、天照大神は皇祖神(皇室の祖とされる神)だけど、『うる星やつら』など色々なところでギャグにされている。

日本人の天皇に対する見方ってのは明治の前と後とでかなりの断絶があって、明治以後の4人の天皇だけが歴史的経緯のせいで特別視されてるんだよ。
a
2012年06月01日 19:24
お互い、失礼な位に馴れ馴れしい空気なのが、この作品の味だと思うんだけどな
あと、なんか勘違いしてる人多いけど、天皇コキ下ろしネタなんて、いくらでもあるだろ
なまえ
2012年06月02日 05:47
>天皇コキ下ろしネタなんて、いくらでもあるだろ
思想無く、”聖おにいさん”のように純粋なネタ漫画で何かある?
昭和天皇以降で
2012年06月02日 16:10
天皇陛下は存命中だからネタに出来ないだけだよな
キリストなんてもはや想像上のキャラみたいなもんだし
 
2012年06月05日 12:39
>キリストなんてもはや想像上のキャラみたいなもんだし

確かに、キリスト教の開祖は居たかもしれないけど、聖書に描かれているようなキリストって人がいたとはとても思えない、それこそ漫画のキャラクターみたいだ
って思ってしまう当たり日本人なのかなぁw
 
2012年06月20日 12:46
理由がなんであろうと天皇をギャグのネタにすることがはばかられるのは間違いないわけで日本は表現タブーのない大らかな国だ、っていうのは違うと思うわ
あと存命中じゃないけど昭和天皇をギャグネタには出来ないだろう普通
とおりすがり
2012年06月22日 09:01
>表紙のイラストのブッダとイエスの立ち位置が違います。
>この理由はわかりませんが、なにか立ち位置に意味があるんでしょうか?

まったくの推測ですが、
タイトルが「ジーザスと仏陀の休日」だからじゃないでしょうか?
やはりキリスト教圏でこの二人を並べる場合、「仏陀とジーザス」ではなく「ジーザスと仏陀」になるのは当然の流れ。
そして、英語やフランス語などは左から右に読みますので、かの国の人たちは視線の移動も自然と左から右に行くそうです。
そこでタイトルどおりイラストも、ジーザス(左)、仏陀(右)の順番に並べたのかもしれません。
ム神論者
2012年06月24日 00:32
>表紙のイラストのブッダとイエスの立ち位置が違います。
>この理由はわかりませんが、なにか立ち位置に意味があるんでしょうか?

キリスト教においては左側を聖、上座と為されているからではないでしょうか。
宗教画の『最後の審判』において右側(右下)に地獄を配することが伝統的構造となっており、その対極にある左側には楽園に通じつ門が描かれることがあります。キリスト教において左側すなわりキリストからみて右側を左よりも貴いとする考えがあるからではないでしょうか。
ケニー
2012年09月27日 09:05
天皇ネタといえば「サウスパーク」。
日本のポケモンが「チンポコモン」として登場した。
日本人が「チンポコモン」で子供を洗脳しアメリカ征服を狙ったという設定で
黒幕の日本人の名前が「ヒロヒト」だったw
これ、日本じゃ放映されなかったでしょ。
やっぱり日本では天皇陛下を茶化すのはタブーなんだよ。

サウスパークはキリストも身障者も茶化してるけどね。
あいうえお
2014年09月12日 20:01
進化論で裁判になるアメリカでは当然出せないでしょうね^^;
管理人さん、こういう系の記事もっと書いてください!
そもそも
2016年06月03日 15:38
実在の人物と空想上の人物を同一視するのは変だよね。