イギリス人が描いたMANGA『ロミオとジュリエット』がクールすぎる ②
前回、イギリスで出版された「Manga Shakespeare」シリーズの『ロミオとジュリエット』をほんの一部だけ紹介しました。登場人物紹介までしかしてないのに、ものすごいツッコミどころの多さだったんですが、今回はマンガの内容を見ていきましょう!
まずは背景から入るのはマンガの基本ですが、のぼりや看板に「渋谷 SHIBUYA」とか「表参道」とか書いて渋谷っぽさをアピールしています。イギリス人にわかるかどうかは疑問ですが。
それにしても、この背景、デッサンがめちゃくちゃ狂ってるんですが、だれも指摘しなかったのでしょうか?
まあ、今回はマンガの技術講座じゃないからいいや(でも遠近法って日本のマンガの技術っていうよりヨーロッパの技術だよなあ)。ページを捲ってみましょう。
おお、たしかに日本のマンガっぽい。マンガっぽいけど、ノド(内側)の方までタチキリしてしまっているあたりがやっぱり素人っぽい。その辺は多分イギリスでマンガの描き方を教えてくれる人がいなかったんでしょうから、仕方がないところではあります。
ところで、日本のマンガしか読んだことがない人はどの辺が「マンガっぽい」のかわかりづらいと思いますので、一応解説しておきますと、
1.白黒である(アメコミはフルカラーが普通)
2.スクリーントーンが使ってある(白黒のアメコミでも、トーンは使っていない。使っていてもカケアミ程度)
3.絵柄がマンガ的(これはなんとなくわかるよね)
4.フキダシが丸い縦長(アメコミは横長がほとんど。日本のマンガのフキダシが縦長なのは、日本語が縦書きだからである)
あたりがマンガっぽいです。

↑欧米のコミックは基本こんな感じ
じゃあ、内容を詳しく見ていきましょう。
キャピュレット家(ジュリエットの家)の2人のヤクザが渋谷の表参道で(おそらく親分の家と思われる建物の前に)立っていると、そこにモンタギュー家(ロミオの家)の人間がやってきます。このうちの1人は Abraham と言いますが、日の丸に THE Montagues と書かれたTシャツを着ているというキャラデザインです。なんだか外人用土産のTシャツっぽいです。
ところで、キャピュレット家のヤクザ2人、表参道を日本刀を持って歩いているんですが、どういう世界なんだ、これは。『斬』の現代か?
するとこの4人、単に会っただけだというのにいきなり決闘になります。
Draw thy tool.
Here comes of the house of Montagues.
Do you quarrel, sir?
Quarrel, sir? No, sir.
Draw, if you be men!
何言っとるかわからん!
やべえ、これシェークスピア時代の英語だ。your じゃなくて thy なんて言ってる。ただでさえ何が起きとるのかわけわからんのに(本当に展開が唐突なのだ)、余計にわけわからん。
まずは背景から入るのはマンガの基本ですが、のぼりや看板に「渋谷 SHIBUYA」とか「表参道」とか書いて渋谷っぽさをアピールしています。イギリス人にわかるかどうかは疑問ですが。
それにしても、この背景、デッサンがめちゃくちゃ狂ってるんですが、だれも指摘しなかったのでしょうか?
まあ、今回はマンガの技術講座じゃないからいいや(でも遠近法って日本のマンガの技術っていうよりヨーロッパの技術だよなあ)。ページを捲ってみましょう。
おお、たしかに日本のマンガっぽい。マンガっぽいけど、ノド(内側)の方までタチキリしてしまっているあたりがやっぱり素人っぽい。その辺は多分イギリスでマンガの描き方を教えてくれる人がいなかったんでしょうから、仕方がないところではあります。
ところで、日本のマンガしか読んだことがない人はどの辺が「マンガっぽい」のかわかりづらいと思いますので、一応解説しておきますと、
1.白黒である(アメコミはフルカラーが普通)
2.スクリーントーンが使ってある(白黒のアメコミでも、トーンは使っていない。使っていてもカケアミ程度)
3.絵柄がマンガ的(これはなんとなくわかるよね)
4.フキダシが丸い縦長(アメコミは横長がほとんど。日本のマンガのフキダシが縦長なのは、日本語が縦書きだからである)
あたりがマンガっぽいです。

↑欧米のコミックは基本こんな感じ
じゃあ、内容を詳しく見ていきましょう。
キャピュレット家(ジュリエットの家)の2人のヤクザが渋谷の表参道で(おそらく親分の家と思われる建物の前に)立っていると、そこにモンタギュー家(ロミオの家)の人間がやってきます。このうちの1人は Abraham と言いますが、日の丸に THE Montagues と書かれたTシャツを着ているというキャラデザインです。なんだか外人用土産のTシャツっぽいです。
ところで、キャピュレット家のヤクザ2人、表参道を日本刀を持って歩いているんですが、どういう世界なんだ、これは。『斬』の現代か?
するとこの4人、単に会っただけだというのにいきなり決闘になります。
Here comes of the house of Montagues.
Do you quarrel, sir?
Quarrel, sir? No, sir.
Draw, if you be men!
何言っとるかわからん!
やべえ、これシェークスピア時代の英語だ。your じゃなくて thy なんて言ってる。ただでさえ何が起きとるのかわけわからんのに(本当に展開が唐突なのだ)、余計にわけわからん。
マレーシア生まれで
タイ出身の
イギリス人が描く
シェークスピアをテーマに
現代日本を舞台にして
初期近代英語で書かれた
任侠マンガ
もう何がなんだか。
で、ティボルト(キャピュレット夫人の甥)とベンヴォーリオ(モンタギューの甥でロミオの友人)の2人が加わってチャンバラになります。
そこにエスカラスという人物がやってきます。シェークスピアの原作ではエスカラスは公爵らしいですが、このマンガでは警察官です。にもかかわらず原作のまま Prince Escalus となっているのが面白いやら、変な感じやら。
で、「この平和の敵ども!武器を地面に捨てろ!」ってなことを言います。早速逮捕です!
Capulet and Montague have thrice disturbed the quiet of our streets...
If ever you disturb our streets again,,,
your lives shall pay the forfeit of the peace.
(キャピュレットとモンタギューはこれまで3度この街を騒がせた。
もしもう1度そのようなことがあれば
命をもってその代償を支払ってもらうぞ!)
んん!? 「もう1度そのようなことがあれば」!? 逮捕しなのか!?
で、ページを捲ると、もう警察いなかった。出番1ページで終わりです。
渋谷で数人の男が日本刀振り回して決闘してたのに、警察は逮捕しないで注意だけで行っちゃいました。本当に『斬』みたいな世界になっています。そういう世界設定なんだというふうに理解しましょう。
193ページあるマンガなのに、8ページ目の時点でこの突っ込みどころ満載っぷり。きりがないのでこっからは駆け足で紹介します。
この後ロミオが登場します。何か木の下で恋の病で泣いております。
舞台は移り、ジュリエットも登場します。
ジュリエットはセーラー服で登場です。日本の女子高生がセーラー服を着ているのは、『セーラームーン』以降もはや世界の常識です。
で、この後は大体原作の通りの展開をします。ロミオがキャピュレット家のパーティーに行って、ジュリエットと出会って、都合よく2人とも一目ぼれして、「どうして貴方はロミオなの」ってなって。まあ、そこは省略。
少々余談ですが、このマンガを読んでいると、時々かなり不自然な感じでデフォルメキャラが登場します。
どうも諸外国ではデフォルメキャラは日本のマンガ・アニメの特徴の一つと捉えられているようで、Chibi として知られています。何冊も How to draw chibi なんて本が出版されているくらいでして、この辺、日本人が当たり前として捉えているものが欧米人の目には奇異に映るなんて、面白いですね。
なので、外国人が書く MANGA には、しょっちゅうデフォルメキャラが登場します。しかも、多くの場合何の脈絡もなくかなり不自然な感じで使われています。まだまだ日本式の表現に不慣れな感はぬぐえませんが、もしこのまま欧米でも MANGA を描く作家が増え続ければ、そのうち慣れてくることでしょう。
それはそうと、話をストーリーに戻しましょう。
ロミオの友人マキューシオとベンヴォーリオが路上ライブをやっているところに、キャピュレット家のティボルトがやってきて、再び戦いになります。
なんとマキューシオくん、ギターから武器を取り出します!なんでそんなところに武器を隠しているんだ、お前は。
そして、マキューシオがティボルトに殺されて、それに怒ったロミオにティボルトが殺されます。
原作ではロミオはこの殺人事件によってヴェローナの街を追放されるんですが、
ここでは渋谷を追放されます。
なんじゃそれ。
また、原作ではロミオはロレンス修道士という人がいる教会に逃げ込むんですが、
ここでは神社に逃げ込みます。
そして、ロレンス修道士はロミオにマントヴァ(英語名Mantua)という街に行くように言うのですが、ここでロレンス修道士が渡す通行手形には思いっきり
「京都」って書いてあります。
Mantua District とか Ryokan Mantua とかの文字も確認できますので、
どうもマントヴァは京都にあるらしいです。
東京を追放されて京都に行く…。どうもこれで殺人の罪は許されるらしい。なんてこった。
この後の展開は原作の通りなので端折りますが、最終的にはロミオとジュリエットが自殺しておしまいです。
ところで、前回、登場人物紹介のページで、ロミオがロック歌手だという設定を紹介しましたが、本編には一切登場しませんでした。
友人のマキューシオがギター(らしきもの)を持ち、そこから武器を取り出すシーンはありましたが、マキューシオもギター弾いているシーンはありません。ロミオも、ギターを弾くシーンも歌うシーンもありませんでした。なんだったんだ、あの rock idol っていう設定は。
さらにジュリエットが Shibuya Girl だという設定も一切関係ありませんでした。渋谷と思われる背景が登場したのは最初の3ページの表参道だけでした。結局、現代の東京を舞台にしたのに、セリフをシェークスピアの原文のままにこだわったために、これらの設定が何の意味もなさなくなったのでしょう。そんなこと描く前に気がついてほしかったところですが、面白いからいいや。
それにしても、ものすごい突っ込みどころの多さでした。これだから世界は侮れません。
この「MANGA SHAKESPEARE」シリーズは10冊以上出ていて日本のアマゾンでも購入できるので、興味をもたれた方は是非購入してみてください。絶対に面白いと思います。
「MANGA王国ジパング」では、今後も世界のMANGAを紹介していきます。
ではまた!

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イギリス人が描く
シェークスピアをテーマに
現代日本を舞台にして
初期近代英語で書かれた
任侠マンガ
もう何がなんだか。
で、ティボルト(キャピュレット夫人の甥)とベンヴォーリオ(モンタギューの甥でロミオの友人)の2人が加わってチャンバラになります。
そこにエスカラスという人物がやってきます。シェークスピアの原作ではエスカラスは公爵らしいですが、このマンガでは警察官です。にもかかわらず原作のまま Prince Escalus となっているのが面白いやら、変な感じやら。
で、「この平和の敵ども!武器を地面に捨てろ!」ってなことを言います。早速逮捕です!
If ever you disturb our streets again,,,
your lives shall pay the forfeit of the peace.
(キャピュレットとモンタギューはこれまで3度この街を騒がせた。
もしもう1度そのようなことがあれば
命をもってその代償を支払ってもらうぞ!)
んん!? 「もう1度そのようなことがあれば」!? 逮捕しなのか!?
で、ページを捲ると、もう警察いなかった。出番1ページで終わりです。
渋谷で数人の男が日本刀振り回して決闘してたのに、警察は逮捕しないで注意だけで行っちゃいました。本当に『斬』みたいな世界になっています。そういう世界設定なんだというふうに理解しましょう。
193ページあるマンガなのに、8ページ目の時点でこの突っ込みどころ満載っぷり。きりがないのでこっからは駆け足で紹介します。
この後ロミオが登場します。何か木の下で恋の病で泣いております。
舞台は移り、ジュリエットも登場します。
ジュリエットはセーラー服で登場です。日本の女子高生がセーラー服を着ているのは、『セーラームーン』以降もはや世界の常識です。
で、この後は大体原作の通りの展開をします。ロミオがキャピュレット家のパーティーに行って、ジュリエットと出会って、都合よく2人とも一目ぼれして、「どうして貴方はロミオなの」ってなって。まあ、そこは省略。
少々余談ですが、このマンガを読んでいると、時々かなり不自然な感じでデフォルメキャラが登場します。
どうも諸外国ではデフォルメキャラは日本のマンガ・アニメの特徴の一つと捉えられているようで、Chibi として知られています。何冊も How to draw chibi なんて本が出版されているくらいでして、この辺、日本人が当たり前として捉えているものが欧米人の目には奇異に映るなんて、面白いですね。
なので、外国人が書く MANGA には、しょっちゅうデフォルメキャラが登場します。しかも、多くの場合何の脈絡もなくかなり不自然な感じで使われています。まだまだ日本式の表現に不慣れな感はぬぐえませんが、もしこのまま欧米でも MANGA を描く作家が増え続ければ、そのうち慣れてくることでしょう。
それはそうと、話をストーリーに戻しましょう。
ロミオの友人マキューシオとベンヴォーリオが路上ライブをやっているところに、キャピュレット家のティボルトがやってきて、再び戦いになります。
なんとマキューシオくん、ギターから武器を取り出します!なんでそんなところに武器を隠しているんだ、お前は。
そして、マキューシオがティボルトに殺されて、それに怒ったロミオにティボルトが殺されます。
原作ではロミオはこの殺人事件によってヴェローナの街を追放されるんですが、
ここでは渋谷を追放されます。
なんじゃそれ。
また、原作ではロミオはロレンス修道士という人がいる教会に逃げ込むんですが、
ここでは神社に逃げ込みます。
そして、ロレンス修道士はロミオにマントヴァ(英語名Mantua)という街に行くように言うのですが、ここでロレンス修道士が渡す通行手形には思いっきり
「京都」って書いてあります。
Mantua District とか Ryokan Mantua とかの文字も確認できますので、
どうもマントヴァは京都にあるらしいです。
東京を追放されて京都に行く…。どうもこれで殺人の罪は許されるらしい。なんてこった。
この後の展開は原作の通りなので端折りますが、最終的にはロミオとジュリエットが自殺しておしまいです。
ところで、前回、登場人物紹介のページで、ロミオがロック歌手だという設定を紹介しましたが、本編には一切登場しませんでした。
友人のマキューシオがギター(らしきもの)を持ち、そこから武器を取り出すシーンはありましたが、マキューシオもギター弾いているシーンはありません。ロミオも、ギターを弾くシーンも歌うシーンもありませんでした。なんだったんだ、あの rock idol っていう設定は。
さらにジュリエットが Shibuya Girl だという設定も一切関係ありませんでした。渋谷と思われる背景が登場したのは最初の3ページの表参道だけでした。結局、現代の東京を舞台にしたのに、セリフをシェークスピアの原文のままにこだわったために、これらの設定が何の意味もなさなくなったのでしょう。そんなこと描く前に気がついてほしかったところですが、面白いからいいや。
それにしても、ものすごい突っ込みどころの多さでした。これだから世界は侮れません。
この「MANGA SHAKESPEARE」シリーズは10冊以上出ていて日本のアマゾンでも購入できるので、興味をもたれた方は是非購入してみてください。絶対に面白いと思います。
「MANGA王国ジパング」では、今後も世界のMANGAを紹介していきます。
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この記事へのコメント
三国志なんて武将が女になってたり完全なエロになってたりビーム出したりしてる。中国人つっこみまくりだろうな~って思う
そういえば海外出身のエロ漫画家で凄く絵が綺麗な人が日本にいたような気がする
どんだけ日本かぶれなんだか・・・
これは、任侠武闘派恋愛漫画じゃなくて、ノリつっこみを勉強する為の教本なんだな?
な?そうなんだな?
数年後に見返して身悶えちゃうレベルの漫画が
ちゃんと商業ベースに乗っちゃうのか
世界は広いな
このぶっ飛んだ世界観にはかなりの才能を感じる。
……気がするだけ
その中で「お気に召すまま」はロンドン在住の轡田千重さんという日本人女性が描いているようです.この方は初めて知りましたが,一部では結構,有名っぽいですね.
公式ページをちらと覗いた限りでは,何か中国っぽい雰囲気が満々なのですが,舞台は一体どこなのか?
この方,なんと「葉隠」も描いているらしく,失礼ですがこの「ロミオとジュリエット」に通ずるすばらしさが期待できそうな感じです.
内容だって、古典のパクリ。かなり雑で、いいかげんだ。
こういうレベルの低さを指摘せず、外人が描いたという理由だけで、
誉めそやす日本人やマスメディアにも問題がある。
冷徹に厳しく見るべきだ。如何に日本のマンガがレベルが高いが
分かる。こういうのが、商業誌で売れるということは、
如何にイギリスのレベルが低いかを端的に示している。