ジョジョの奇妙な擬音に翻訳者も音を上げた! 北米版『ジョジョの奇妙な冒険』
『ジョジョの奇妙な冒険』がテレビアニメ化しましたね。昔のOVAは第三部だけでしたが、今回は第一部からアニメ化してくれており、100巻もある原作のどこまでアニメ化してくれるのか楽しみです。これを機会に、原作を読まれたことが無い人も『ジョジョ』に触れてみてはいかがでしょうか?
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さて、『ジョジョ』と言えば擬音、擬音と言えば『ジョジョ』です。日本語はオノマトペ(擬音語・擬態語)が世界の中でも特に豊富な言語として知られており、マンガはそれを実にたくみに使って発展してきました。これについては、また今度詳しく述べたいと思いますが、とりあえず今回は『ジョジョ』について述べましょう。カエル越しに岩を砕く時の擬音「メメタァ」とか、キスの時の「ズキュウウゥン」とかが特に有名ですが、もう突っ込みどころ満載のジョジョの擬音。アニメ版でも擬音がそのまま表現されるという、ものすごい演出がなされていましたね。凄い。

↑『ジョジョ』の伝説的擬音。
「カエル越しに岩を砕く」時点で既に発想が斜め上過ぎる


↑アニメ第1話から。アニメで擬音をそのまま描くとは…!
どうでもいい話ですが、今楽天で空き缶を手軽に「メメタァ」と潰せる「缶クラッシャー」が売ってるらしいですよ。
↑缶はつぶれたのに蛙はなんともないッ!
それはそうと、日本のマンガの擬音というものは、実に翻訳しづらいし、絵にかかってしまっているので、なかなか外国語に直しづらい、翻訳者から見れば実にやっかいなものなのです。
現在世界のマンガ翻訳業界は、大きく2つの流派に分かれています。すなわち、擬音を訳す派と訳さない派です。かつては海外でより受け入れられやすいように、擬音を全て直すのが普通でしたが、2000年くらいを境に、よりオリジナルに忠実なものが読みたいという要望と、コストダウンの2点から、擬音を直さない派が増えました。

↑台詞だけ英語にして、擬音はそのままのことが多い
(左:『よつばと』(Yen Press刊)
中:『のだめカンタービレ』(Del Ray刊)
右:『ケロロ軍曹』(Tokyo Pop刊))
そんな中、北米で唯一今でも擬音を英語に直しているのが、アメリカで初めて本格的にマンガ出版を始めたVIZ Mediaです。現在では小学館と集英社の子会社化しており、両社のマンガは全てVIZが翻訳しています。

↑『スラムダンク』(左:日本、右:北米)

↑『ドラゴンボール』(左:日本、右:北米)

↑『はちみつとクローバー』(左:日本、右:北米)
ご覧のとおり、VIZは、擬音一つ一つを丁寧に直すという実に地道かつ緻密な作業をやっており、個人的には日本語のままより、こっちの方がずっと好きです。他の出版社が描き文字を英語に直すのをやめてしまった中、今でも一つ一つ丁寧に描きなおしているVIZは、大したものだと思います。

まあ、私の場合、日本のオリジナルを持っているから海外版は直してあるほうが好きなわけで、オリジナルを求める外国人からしたら、直してないほうがいいのかも知れませんが…。私も、海外のマンガが日本で出版されるときに擬音がカタカナに直してあったら「やめろよ、もう!」って思うだろうから…。
それはそうと、『ジョジョ』は集英社の出版なので、当然翻訳はその子会社であるVIZが手がけました。前述の通り、VIZは翻訳事業を始めてこの20年、丁寧に描き文字を描き直してきた会社です。『ジョジョ』の独特の描き文字をどう直しているのか、ワクワクしながら調べてみました。
これが、北米版『ジョジョ』の描き文字です!



↑北米版『ジョジョ』
な…直してない…だと…?
なんと、『ジョジョ』の描き文字は英語に直されておらず、日本語の描き文字のそばに小さく英語が添えられていました(「ゴゴゴ」の傍には「G G G」、「ドドド」の傍には「D D D」と書かれています)。残念! すごく楽しみだったのに!
『ジョジョ』の描き文字は、もはやただの描き文字とは言えないくらい独特な臨場感をかもし出しているので、これを直すのは不可能と判断されたんでしょう。20年間、丁寧に丁寧に描き文字を直してきたVIZの伝統が、ついに『ジョジョ』によって崩されたのです。『ジョジョ』の描き文字の凄さが、また一つ証明された気がします。
編集者「いつもどおり、擬音の翻訳もお願いします」
翻訳者「確かに英語に直したほうがアメリカの読者に読みやすいですもんね…。
だが断る。
この翻訳者が最も好きな事のひとつは、
自分で偉いと思ってる編集者に『NO』と断ってやる事だ」
編集者「なっ! 何を言うだァーーーーーッ! ゆるさんッ!」
ってなやり取りが、編集者と翻訳者の間で交わされたことでしょう。
ちなみに、北米版『ジョジョ』は人気の第三部だけしか刊行されておりません。今回のテレビアニメ化でもしアメリカでも『ジョジョ』の人気が出れば、第一部も刊行されるかもしれませんが、その際にもきっと第一部の名擬音「ズキュウウゥン」や「メメタァ」は翻訳されないと思います。英語で「メメタァ」を何と表現するのか、凄く楽しみだったのに…。
なお、「MANGA王国ジパング」では、現在北米版以外の『ジョジョ』の調査を開始しております。手に入れましたら、北米以外で『ジョジョ』の擬音がどうなっているのか、紹介していきたいと思います。
ではまた!
↑この記事を面白いと思った方は、応援のクリックをお願いします。
↓欲しい商品をここで買ってくれたら、あなたは世界一ィィィィイいい人です。
↓「マンガ家、荒木飛呂彦自身が「ジョジョ現象」の秘密を解き明かす」らしいです。
今amazonの書籍部門1位の売り上げらしいですよ!
↓放送中のアニメのブルーレイ。フィギュアが手に入るらしいです。
↓『ジョジョ』とは何の関係も無いですが、ノーベル賞記念
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そんな中、北米で唯一今でも擬音を英語に直しているのが、アメリカで初めて本格的にマンガ出版を始めたVIZ Mediaです。現在では小学館と集英社の子会社化しており、両社のマンガは全てVIZが翻訳しています。

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ご覧のとおり、VIZは、擬音一つ一つを丁寧に直すという実に地道かつ緻密な作業をやっており、個人的には日本語のままより、こっちの方がずっと好きです。他の出版社が描き文字を英語に直すのをやめてしまった中、今でも一つ一つ丁寧に描きなおしているVIZは、大したものだと思います。

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これが、北米版『ジョジョ』の描き文字です!



↑北米版『ジョジョ』
な…直してない…だと…?
なんと、『ジョジョ』の描き文字は英語に直されておらず、日本語の描き文字のそばに小さく英語が添えられていました(「ゴゴゴ」の傍には「G G G」、「ドドド」の傍には「D D D」と書かれています)。残念! すごく楽しみだったのに!
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編集者「いつもどおり、擬音の翻訳もお願いします」
翻訳者「確かに英語に直したほうがアメリカの読者に読みやすいですもんね…。
だが断る。
この翻訳者が最も好きな事のひとつは、
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編集者「なっ! 何を言うだァーーーーーッ! ゆるさんッ!」
ってなやり取りが、編集者と翻訳者の間で交わされたことでしょう。
ちなみに、北米版『ジョジョ』は人気の第三部だけしか刊行されておりません。今回のテレビアニメ化でもしアメリカでも『ジョジョ』の人気が出れば、第一部も刊行されるかもしれませんが、その際にもきっと第一部の名擬音「ズキュウウゥン」や「メメタァ」は翻訳されないと思います。英語で「メメタァ」を何と表現するのか、凄く楽しみだったのに…。
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↓『ジョジョ』とは何の関係も無いですが、ノーベル賞記念
この記事へのコメント
ちなみに翻訳本は日本と同じ右開きなのでしょうか。
あとケイタイでアクセスすると変な文字が見えるようです。
それぞれイメージする擬音が日本語と英語で違うのは分かるけど
擬音を実際発音したときに全く違う発音になってしまうのはなんか寂しいというか違うと思うんだよな
俺は訳さない派の気持ちの方が分かるかなあ
メメタァがwhackとかズキュウゥゥンがsmooochになってたらやっぱりコレジャナイって思うな
擬音も漫画の一部であり書き換えたりはしないんだ、って言ってた
ナイスです
現在北米の翻訳本は、ほぼ全て日本と同じで右から左に読みます。このことについては、いつか詳しく説明します。
>>あさん
北米以外はちゃんと調べていませんが、北米では『ONE PIECE』などジャンプマンガは全てVizの出版ですので、擬音は全て英語に直されています。
「タイムリーでありがたい」
例えばアメコミの擬音とかが日本語で描き直されていたら、雰囲気変わっちゃうもの。
向こうの出版社も漫画を愛していることがわかるエピソードで
面白かったです
それを伝えてやれば翻訳できるのではないか
ORAORAは笑いましたw