台湾の日本語教科書が面白すぎる! 『台灣人學日語』

台湾はご存知の通り1895年から1945年までの50年間日本領でして、今でも日本との関係は深く、日本語教育も盛んです。

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私は外国に行ったら必ず現地の日本語教科書を探すのですが、去年台湾に行った際、台湾大学の目の前の本屋に入ったら、語学書コーナーの大部分を日本語が占めており、なんと英語よりもスペースが広かったので驚かされました。




↑「日語学習」が本棚4つ分を占める。




↑台湾発行の本のほか、日本で発行された日本語本も置いてあった

外国で買う日本語教科書には面白いものがたくさんあります。日本語が間違っていたり、不自然だったり、「明治か!」と思うような古い文だったり。別に馬鹿にしているわけじゃなく、私は単純に「外国から見た日本」みたいなものが大好きなんですよ。きっと日本で出ている外国語参考書もおかしなものがたくさんあるんだろうなあ、と思いつつ、今回はその中の1冊、『台灣人學日語』を紹介しましょう。


↑今回紹介する日本語教本

外国語学習本は、文字を習って、挨拶を習って、簡単な単語を習って、「私は~です」みたいなものから始まりますが、この本もその王道パターンに則っています。




↑最初の3ページ

この点に於いて、この本は決しておかしくないんですが、読み進めてみると何かがおかしい。学習が面白くなるよう笑わせようとしている意気込みは伝わってくるのですが、どうにもセンスがおかしく、作者が意図しているだろうポイントとは別のところで笑ってしまいます。例えば、あいさつのページの「こんばんは」のところ。




↑「こんばんは」使用例

台湾でも泥棒がほっかむりをするのかどうか知りませんが、いかにも真面目な先生が考えたジョークという感じですね。これはジョークの意図がわかるのでよいのですが、この後、意図がよくわからないジョークが増えてきます。

「一休み」というコーナーでは、「しんぶんし」「やおや」「こねこ」といった逆さ言葉など、ちょっと面白い日本語が載っているんですが、そこのイラストはこんなの。


↑おもしろい日本語の紹介

覚える必要あるのか、その単語!? 上の4つは使いますが、「点取り虫」なんて実際に使うことあるんでしょうか? まだ「ガリベン」の方が使う気がします。しかし、このへんまではまだいいです。問題はこの後。

「これはなんですか?」「それは~です」を習うシーンの使用例。



どうしてそうなった!

何だこの使用例…。笑わせようとしているのはわかりますが、筆者が意図しているのとは違う笑いがこみ上げてきます。

この本は、イラストも写真も全て作者と作者の奥さんのお二人で作っているらしく、絵がかなりユニーク(というか何というか)です。子供たちが面白がってくれるように、一生懸命作者の先生が考える「面白いジョークイラスト」を描かれたんだろうなあと、努力のあとが凄くよく伝わってきます。ですが、やっぱり先生が意図したであろう面白さとは違う面白さが伝わってきてしまいます。

「こんな」「そんな」「あんな」「どんな」を習う回。丁寧に言うと「この様な」「その様な」「あの様な」「どの様な」ともいえるという説明の後のイラスト。


↑「こんな」使用例

どんな人だよ!

何を狙ったイラストなのか、よくわかりません。ギャグなのかギャグじゃないのかさえ、私にはよくわかりません。

続いての「どんな」の使用例。



この本の対象年齢がわからん!

イラストの感じからして子供向けの本だと思ったのですが、この例文からするとそうでもないのでしょうか? どうもこの本の対象年齢は、初恋の甘酸っぱさがわかる年齢らしいです

続きまして、「ここ」「そこ」「あそこ」「どこ」を習う課。「台北新公園はどちらですか」「台北新公園はあちらです」とか「あちらの部屋はどなたの部屋ですか」「あちらは黄さんの部屋です」とかの例文と一緒に描いてあるイラストがこちら。


↑「どちら」使用例

これは、台湾人が見て面白いのか…?

日本人なら、これが「梅干」と「ウメ星」をかけたギャグだとわかりますが、台湾人が見て意味がわかるんでしょうか? この本、このページまでで「梅干」は習ってないみたいなんですが…。

そのすぐ次のイラストがまた気になります。


なぜこんな深刻な内容を…。
「おうちはどちらですか」と聞いていますが、おばあさんが旅支度な上、「わかりません」と答えているということは、今から行く「おうち」は自宅ではなく、息子や娘の家か何かなのでしょうか? それとも、家出したおばあさんが、家に帰ろうとして道がわからなくなってのでしょうか? このおばあさんがどうしてこんなことになって、ちゃんと「おうち」に着けたのか、気になって仕方がありません。

その次のイラスト。東西南北を習うページではこんなイラストが。


これは東西南北じゃなくて上下左右だろ!
なぜ東西南北を習う箇所で、地図を使わず、漂流者のイラストを使うのだ…。作者のセンスが謎です。この漂流者助かったのでしょうか? これまた先が気になります。

続いて紹介するのは、「~へ」「~に」「行きます」「来ます」を習う課です。
「あなたはこれから会社行きますか」
「いいえ、行きません。頭が痛いです。病院行きます」
という例文のすぐ下に添えられているイラストがこちら!


だから何故こういう深刻なイラストを使う…。 
作者は笑わせるつもりなのかなんなのか、私には意図が全くわかりません。「来ません」を教えるだけなら、もっと安心して読める例文が幾らでも作れるだろうに、なぜこうも先が気になる、読者を不安にさせるイラストを使うのか…。

同じく「へ」「に」「行きます」「来ます」の課には、こんなイラストもあります。


一緒に行ったれや、おにいちゃん! 
この優しそうなお母さんの笑顔が、このおにいちゃんの一言で、さびしそうな顔に変わってしまうことが想像できて、泣けてきてしまいます。だから、なんでこんな「その先が気になる」イラストばかり使うのだ…。

そして、「あります」「ありません」を習う課でのイラストがこちら。


ほんと、なぜこう深刻なイラストを使うのだ…。 
この本はイラストまで作者の先生自身が描かれているので、イラスト専門家ならやらないであろうとんでもないセンスが、意図していないであろう笑い(と不安)を読者の心に巻き起こします。

みなさんも、外国に行ったら是非日本語の本を探してみてください。きっと面白いのが見つかるはずです。

MANGA王国ジパングでは、今後も面白い海外の日本語教科書を紹介します!(英語、仏語、中国語、韓国語などで書かれた面白い教科書を何冊も持っていてますので、ちょっとずつ紹介していきたいと思います) ではまた!

==おまけ==

本日2月22日、『中国嫁日記』の井上純一さんの新作、『月(ゆえ)とにほんご』が発売されました。早速買ってきたのですが、期待通り面白かったので、ここで勝手に紹介させてもらいます。

基本的には井上さんの中国人の奥さん月(ゆえ)さんが日本語学校に通った経験や、月さんから見た日本語のおかしさ、難しさを紹介したマンガでして、普通のマンガとしても面白く読めますし、今回は筑波大の矢澤教授の監修つきの気になる日本語解説マンガもついています。


↑日本語解説

言語大好き人間としては、「なるほど」もあれば、「ええ、そんな解釈でいいのかなあ?」と思うようなところもあり、それも含めて大変面白いです。『中国嫁日記』と合わせて、大変お薦めです。

あと、予断ですが、上の「『結構です』はYesとNoの両方で使う」という話ですが、英語でも "OK." は Yes の意味で、"That's OK." は断るときに使うので、全く違う言語でも同じような表現があるのは面白いと改めて思いましたね。「ね」があると肯定というのも考えたことが無かったので、面白い視点ですね。外国人の視点から見ると、ふだん気がつかないことを気づかせてもらえるので実に楽しいです。

↓全巻超お薦めです。
  

あと、似たようなテーマのマンガで『日本人の知らない日本語』という本が本当に面白いです。日本語学校教師の方のお話なのですが、日本人が思いもつかないような外国人の疑問や間違いを通して、日本語を再発見できる気がします。まさに『日本人の知らない日本語』というタイトルの通りの興味深い内容が、ジョークを交えた見事なマンガで表現されています。

既にベストセラーになっている作品ですが、未読の方は是非ご一読ください。言葉に興味がある人はもちろん、興味がない人もこれを読んだら日本語の面白さに目覚めることでしょう。


↑数え方の授業


↑生徒の思いがけない間違い

↓3巻+α出ています。
  
 

この『日本人の知らない日本語』は、台湾で『日本人也不知道的日本語』(日本人知らない日本語)というタイトルで発売されました。台湾に行ったときに、今回紹介した日本語教科書と一緒に購入してきましたので、それについてもまた今度紹介したいと思います。


↑台湾版『日本人の知らない日本語』

ではまた!

==おまけ==

ご要望がありましたので、情報連絡用掲示板を作りました。からアクセスして、海外におけるマンガ・アニメの面白い情報がありましたら、何でもご連絡ください。楽しみに待っております。

==補足==

コメント欄を見て1冊思い出しました。『脳残君』です。思い出させてくれた方、有難うございます。

中国人から見た日本を描いた作品で、『中国嫁日記』でも紹介されていましてたので、どんな内容かはそちらでご確認ください。『中国嫁』や『日本人の~』に比べるとマンガとしてのレベルはるかに稚拙で、マンガ好きの鑑賞に堪えるかは怪しいですが、これは本当に中国人が描いたマンガですので、『中国嫁』の井上さん曰く、「中国らしさ」がわかるマンガで「今の中国を知る恰好のテキストになってる」とのことです。良くも悪くも日本人にとって関心が高い中国なので、興味がある方は試しに読んでみてはいかがでしょうか。




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この記事へのコメント

 
2013年02月22日 21:59
>>台湾大學の目の前の本屋に入ったら、語学書コーナーの大部分を日本語が占めており、なんと英語よりもスペースが広かったので驚かされました。

すげえなこれ
 
2013年02月22日 22:15
うーむ脳残君は紹介されるようなレベルにないか
名無し
2013年02月22日 22:31
深刻な内容と絵で笑ったw
2013年02月22日 22:43
面白いです! そう、微妙にアマチュアな人の作品って微妙に不安を醸すんですよね~。

むかし丸善の洋書売り場にもおいてあった日本語入門書で
変体仮名を書き順まで教えていて頭が痛くなったことがあります。
そんなもの教えても蕎麦屋の看板しか読めませんって…
僕自身コメントする喜びはあった
2013年02月22日 23:46
>台湾大學

現地語表記(旧字体)にするならちゃんと「臺灣」と書いてあげようよ
d
2013年02月23日 01:07
翻訳系のブログで初めて爆笑したエントリーでした
2013年02月23日 01:12
脳残君は紹介する価値がないと思う
 
2013年02月23日 01:21
> ぼくは行きません。うちにいます。

まさに俺
名無し
2013年02月23日 02:36
2こで1このものは1対だよなぁ
みゅ
2013年02月23日 03:51
「日本人の知らない日本語」ってまた敬語の間違いをこねくり回すような本かと思って勝手に敬遠してましたが、新米日本語教師には必須の本ですね!大発見です。
ジンサンの「月と日本語」はそのうち買おうと思っていましたが、月さんの説明も日本語を教える参考になりそうなので早速買いたいと思います。
偶然ここにたどり着いてよかった~!
zop
2013年02月23日 16:48
た、台湾よ・・・
もうちっと身になる英語の方がよかないか?
まぁ、多分このせいで台湾へ行くとすげぇ面白い事が毎回起こるんだろうけど。
台湾ジョークなのかも
2013年03月11日 04:18
ブラックな皮肉が利いてますな・・;
ニックネーム
2014年05月12日 21:15
>>台湾大學

>現地語表記(旧字体)にするならちゃんと「臺灣」と書いてあげようよ

国立大学を旧帝大と書く人々と同じで恥ずかしいよね
サザえもん
2014年05月13日 11:25
>>ニックネームさん

これは私が説明してなかったのがいけなかったですね。

最初、私が「台湾大學」って書いてたんですよ。大学の「学」が旧字体になっていることに気が付かないでそう書いちゃった。指摘されて気が付いて、「台湾大学」に直したんです。今はその直した表記が表示されています。なので、「現地語表記(旧字体)にするならちゃんと「臺灣」と書いてあげようよ」というコメントは、私のミスに起因するものであって、何もおかしくないのです。

また、国立大については誤解があるようです。「国立大」=「旧帝大」ではありません。
「旧帝大」とは、東大、京大、阪大、名大、北大、東北大、九州大の7つです。国立大学の中で、この7つだけが、戦前「帝国大学」と呼ばれていました。他にも戦前から存在する国立大学は多くありますが、この7つ以外は「帝国大学」ではありませんでした。

今でもこの7つは、国立大学の中で資産トップ7を独占していますし、スポーツでは「七帝戦」と呼ばれる大会が行われています。今でも特別な存在なのです。

ですので、「旧帝大」という言葉は、決して「国立大学を意味もなく旧帝大と呼んでいる恥ずかしい行為」ではなく、ちゃんと理由がある表現なのです。
元旧帝大生
2014年05月27日 23:11
旧帝大には台湾大学(台北帝国大学)も入るんじゃないですかね…
あと京城帝国大学もソウル大学とは別物とされていますが、戦前は歴とした帝国大学でした。
なので、「この7つ以外は」という言い方は語弊があります。

帝大時代にはなかった交流戦を七帝大と呼ぶのはなんか嫌らしいですね(そう呼ぶ人が大勢いるのは知っています)
サザえもん
2014年05月27日 23:49
>>元旧帝大生さん

そうですね。ちょっと言葉が足りませんでしたね。

「現存する『日本の』大学の中では、この7つ以外は『帝国大学』ではありませんでした」というのが正確ですね。

台北帝大も京城帝大も帝大ではありますが、現在日本で「旧帝大」と呼んだ場合通常7大学を指しますので、その2つは捨象しておりました。
24856
2014年06月05日 21:51
揚げ足取りかもしれませんが、「捨象」はabstractのことです。