北米マンガ翻訳界10年の進化を見よ! 北米版『めぞん一刻』

高橋留美子は30年間日本マンガ界を牽引してきた天才マンガ家ですが、その人気は世界レベルであることをご存知でしょうか。日本的でありながら、宇宙人やカンフーアクションを取り入れた、どこか無国籍な感覚が世界でウケた原因でしょう。

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北米最大手のマンガ出版社VIZは、早くからその才能に目をつけ、マンガ・アニメ両方の権利を取得し、特に『らんま1/2』は、『NARUTO』進出まで北米最高売り上げを記録していました。高橋留美子なくして、北米マンガ出版の歴史は語れません。というわけで、今回は高橋留美子の傑作『めぞん一刻』を基に、北米マンガ出版の進化を見てみましょう。

日本では82年発行の『めぞん一刻』第1巻ですが、北米発出版はそれから12年後の94年でした。ずいぶん遅く感じるかもしれませんが、北米でマンガ出版が本格的に始まったのは1987年で、まだ『ドラゴンボール』のような人気作も出版されていなかったので、これでもかなり早い段階であったと言えます。その後2003年に版を変えて再出版されました。今回は、日本版、94年版、03年版の3つを比較して、94年の段階と03年の段階の北米マンガ事情の違いを紹介しましょう。


↑左:日本版、中:94年版、右:03年版

一目見てわかる通り、94年版はサイズが大きいです(値段も17ドルもする。高い! 当時よくこんな高いの買ったな、オレ…) どういうことかと言いますと、このサイズはアメコミの単行本サイズなんです。当時のVIZはアメリカ人に受け入れられやすいよう、いろいろな工夫をしていました。

もっとも大きな変更点として、94年版は左右反転されていました。




↑上:日本版 下:北米94年版

2000年代に入るまで日本のマンガはすべて左右反転されて出版されていました。もちろん、左から右に読む英語に合わせるためです。描き文字や街の看板などもすべて英語に直されています。

それだけではなく、日本円が分かりづらいと判断されたのか、通貨がドルになっています。ここまで変えるというのは、ちょっと意外でした。アメリカ人は、日本の通貨がドルだと勘違いするんちゃうか?




↑上:日本版 下:北米94年版

さらに、第1巻の3話~6話、五代くんの浪人話が丸々カットされています。理由はわかりませんが、おそらく日本の大学受験とか浪人とかの設定が、アメリカ人に理解できないと判断されたのでしょう。


↑浪人時代のこのへんのエピソードは全カット。
試験から逃げ出す五代くんの姿は、
最終回近くで試験から逃げない姿と比較することで
五代くんの成長を表せる重要なエピソードだと思うのですが
カットされてしまい残念

このように、94年版は様々な変更をすることでアメリカの読者にアピールしようとしていました。

ところが、2000年代、アメリカに異変が起きます。インターネットの発展もあり、日本の情報が伝わるようになると、読者がオリジナルに近い商品を求めるようになりました。そして、2003年版では、描き文字を英語に直す以外の変更はすべてなくなり、より日本版に近いものになっています。


↑左右反転がなくなり


↑通貨も円に直され


↑94年版ではカットされていたエピソードも復活

94年から03年までの約10年で、アメリカマンガ翻訳事情が大幅に変わったことがよくわかると思います。90年代にはVIZの独占状態だった日本マンガの翻訳も、様々な出版社が参入するようになり、現在はまた少し事情が変わってきておりますが、日本オリジナルへのリスペクトは増す一方です。

この94~03までの間に、アメリカでどういう変化があったかは、またいろいろな話があるのですが、それはまた次の機会に語るとして、今回はここまでといたしましょう。2000年以降の急激な変化については、ほかの記事でも少し書いておりますので。こちらこちらの記事も、ぜひ参考にしてください。

余談ですが、みなさんも、海外で欲しいものがあったら、「後で買える」なんて思わず買っちゃったほうがいいですよ。旧版の『めぞん』なんてもう手に入らないので、買っといてよかったなーと思っております。昔あだち充の短編集の英語版を買わなかったのが、今でも悔やまれます…。なぜか今amazonで買おうとすると5000円くらいする…。あの時17ドルで買っときゃよかった…。

ではまた!


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↓『めぞん一刻』英語版。もう新品では手に入りにくくなってる


↓旧版『めぞん一刻』


↓『一ポンドの福音』英語版。めっちゃ好きっす。


↓現在連載中『境界のRINNE』。北米史上初の、日本との同時公開をしている作品。


↓北米で大人気を得た『犬夜叉』


↓日本のプレーヤーでも再生可能な『犬夜叉』北米版BD


↓『らんま1/2』の英語版が新しくなって再登場


↓管理人が昔買い損ねたあだち充の短編集。なぜか北米では無名のあだち充センセ。

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この記事へのコメント

名無し
2013年08月10日 02:49
なるほど、とても興味深いですね。
ところで、横書きなのに、現在の版で右開きになって、逆に読みにくくはないのでしょうか?
多少の読みづらさよりも、オリジナルと同じコマ割りのほうがいいというリクエストが多いということでしょうか。
メメタァ
2013年08月10日 03:33
既に擬音をそのまま載せてるフランスとかに比べたらまだまだかな。
日本人としては限界までオリジナルに近い形で作品に関わってくれたら嬉しい。

アニメも金かけて残念な吹き替えするくらいならその金を字幕翻訳の質の向上に当てた方があっちのファンも喜んでくれるし製作側は安く済んでwin-winだと思うんだがね。
よつや
2013年08月10日 04:18
「めぞん一刻」は私の心の一冊なんですけれど(^^;、アニメの影響かは知りませんが、海外の方のコスプレの写真を見たりしたこともあったので、あちらでも結構人気があるのでしょうかね?。
 
2013年08月10日 06:26
左右反転すると服のボタン合わせが男女逆になったり食事のナイフフォークが逆になったりするから絵はそのままで文字だけ横文字にしたほうがいいんでしょ

本の開き方に関しては慣れだと思う
日本語の漫画だって吹き出しの中に横書きの文字を多用している作品だってあるんだから
名無し
2013年08月10日 07:05
本場のアメコミ(ヨーロッパの方だっけか?)でも日本のマンガに影響されて右開きにするところが出てきているらしいので
単に右開きに抵抗がなくなっているんだと思う
jun
2013年08月10日 07:23
今は03年から更に10年たってもっと読みやすくなってるのかな?
zzz
2013年08月10日 09:47
高い!!!
マジかよ!!!
全然庶民の趣味じゃないじゃん!!
死にかけると
2013年08月10日 09:51
10年後は海外対応リフローができる電子書籍が一般化するんだろうな
Syla
2013年08月10日 10:28
自分の知識が10年前で止まってたのを知れて良かった…
名無し
2013年08月10日 10:53
反転されたりカットされるのは作者も嫌だろうなぁ
妙な規制とかされるのも最近は元に近いのが求められているのも
面白いですね。
名無しさん
2013年08月10日 18:00
ラブホの看板のNITEって何じゃそれと思いきやNightの略語だったんだね。
お腹壊したけどトイレに間に合った至福の男
2013年08月10日 19:25
めぞん一刻は一番好きな漫画だから、記事面白かったです
確かに受験・浪人話はニュアンスが伝わりにくいですよね
こちらがハリウッド映画観てる時に、「これはアメリカ人じゃないと100%は楽しめないな」って思う事が結構あるし、だからと
いってカットはしてほしくないですね
 
2013年08月10日 22:52
左右反転させると作中の文字や記号も修正する必要があるからコスト上がっちゃうな
無理に修正して価格が上がって買う人が減るよりも修正箇所少なく安く提供して沢山の人に買ってもらうほうがいいね