2chとまとめサイトによる改竄拡散事件後日談。悪いのはセイン氏ではなく出版社かもしれない

前回、私の記事が2ちゃんねるで改変されて、それを数多くのまとめサイトが無批判に転載してデタラメを拡散する結果になったということを報告しました。「1週間前のことをまだ怒ってるのか」と思う人もいるかもしれませんが、追記みたいなものをもう少し。

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簡単に経過を説明しますと、私は10月26日に「『日本人の英語はおかしい』と主張する本の英語がおかしい件について」というタイトルで、アスコムから出ている『日本人のちょっとヘンな英語』という本を批判しました。この本では How are you? や My name is... を「古い英語」「死語」と言ってあたかも使えない表現であるかのように紹介しているのですが、「そんなことはない」と反論する記事を執筆したのです。

ところが、私が記事を書いたわずか1時間後にこれが2ちゃんねるに転載されました。単に2ちゃんねるに転載されただけなら、私もそんなに怒りはしませんでした。ですが、信じられないことに、2ちゃんねるのスレッドには

日本人 「Hello! My name is ~」 外国人(何100年以上前の言語使ってんだこいつ・・・)

という煽情的なタイトルが付けられ、この本の紹介の部分だけが引用され、この本の主張を拡散する目的で使われてしまいました。

私はこの本に書いてあることは正しくなく、日本人の英語コンプレックスを利用する不安商法で、このような本に騙されてはいけない、ということを伝える目的で記事を執筆しました。ところが、この2ちゃんねるのスレッドを立てた人物は、その記事を逆にこの本の主張を拡散する目的で悪用しました。それも煽情的なタイトルをつけて、日本人の英語コンプレックスをさらに刺激するようにして。いたずら目的なのか何なのかわかりませんが、とんでもなく恥知らずな行為であると思います。

さらに困ったことに、そのスレッドがいわゆるまとめサイトに次々に転載され、この本の主張をさらに拡散することになってしまいました。私は学校で習う英語表現を、重箱の隅をつつくような方法で、あたかも古くて使えない英語であるかのように言うこんな本に騙されてほしくないから記事を執筆したのに、その記事が2ちゃんねるとまとめサイトのせいで、「日本人の英語は古くて使えない」という主張を拡散することになってしまったのです。

当然私は各まとめサイトにコメント欄やツイッターを通じて連絡し、そのいくつかは記事を削除してくれました。ですが、

「Rajic ラジック」
「(・∀・)イイ! まとめ」
「午後の蒐集」
「気ままに速報」
「ケジメあんてな。(β) 」
「まとめ2ちゃんねる」
「しらかば速報」
「世界速報」
「今日の話題をまとめてみた」
「オート速報」

など、いまだに削除してくれないサイトも多数あります。また、「暇人/(^o^)\速報」は、私の執筆した文章だけ削除し、「記事は著作権法第32条で認められた引用です」なんて加筆して画像とスレッドの転載自体は継続しています。消すなら消せよ。当然、自分の記事じゃなくて単なる転載なんで、著作権法で認められた引用なんかじゃないし、かっこつけて英語でも注意書きが書いてあるけど、その英語が間違ってる。

>>This article is a quote that was recognized in Article 32 of the Copyright Act.
>>You may report mischievous will be punished by the Terms and Conditions of this site.

二文目は英語になってないし、「いたずらに報告すればこのサイトの利用規定により処罰されます」みたいなことを言いたいのでしょうが、どの口がそういうのか。

削除してくれたサイトでも、こちらに連絡してくれたのは「どこにもナッツ」というサイトのみ。あとは無言削除。

そしてこれらまとめサイトを見た人のツイッターには

「つまり高卒英語はクソの固まりってことか」

「授業の英語って使えないの多いんだって」

「ためになるな・・ わたしが習ってきた英会話って古いんか・・」

「My name is〜じゃないと×だからなぁ英語の授業は…
 私が英語を喋れないのは明らかに授業内容が悪い!(責任転嫁)」

「なるほど、やはり日本の英語の教科書はクソやな」

なんて意見がいくつも見つかります。私は「日本の英語教科書は間違ってる」とか「授業の英語は使えない」とか、そういった間違った考えを持ってほしくないから記事を執筆したのに、それが逆にこのような意見を拡散することに利用されるとは、激しい怒りを感じます。本当に最初に2ちゃんねるに書き込みした奴はとんでもない恥知らずだと思う。それをソースを確認しないで転載するまとめサイトの人らも何を考えてるのかわからないです。

改めて本の内容を見てみましょう。




この本では、 "How are you?" も "My name is ○○" も、「死語」で「サムライ英語」だと言います。代わりに "How are you doing?" や "I'm ○○." を使えと言います。

私はこんなのは絶対嘘だと確信を持っているわけですが、ネットの Yahoo! Answers で質問を投稿してみました。もちろんネットの書き込みなんで、ネイティブの回答とは限りませんし、信頼性はものすごく低いですが、ちょっとした参考にはなるでしょう。

「有名な英語教師のデイビッド・セインという人が "How are you?" はすごく古いから "How are you doing?" を使えと言っているのですが、これは正しいのですか?」

という質問を投稿してみました(これ)。

11/1時点で現在7件の回答が寄せられていますが、6件が「"How are you?" は古くない」という回答です。のこり一つは「古い」と言いたいのか何なのかよくわからん。


"How are you?" is still standard English, without being in any way formal, but "How are you doing?" is very informal. (後略)
("How are you?"は今でも標準的な英語でフォーマルな表現ですが、"How are you doing?" は非常にインフォーマルです)

 
Language evolves. Hello ... hi ... what's up ... sup ....
(言葉は進化します。こんにちは、やあ、よう、オッス…)


it isn't.
(古くない)

 
(前略) there is nothing "old" about 'How are you?"
("How are you?" が「古い」なんてこと全然ないです)

 
It is not "very old." It is somewhat formal, but the meaning can vary depending on whether you stress the word 'are', the word 'you', or neither.
"How are you doing?" is quite informal. When meeting someone you already know, you would be more likely to say "How have you been?"
I don't know what this teacher is famous for, because he seems to be giving dubious advice.
(「すごく古い」ことはないです。形式ばっている感はありますが、are に強制を置くか you に強制を置くか、それとも強制を置かないかで意味が変わります。
"How are you doing?" は大変くだけた言い方です。知り合いに会うときは "How have you been?" の方がよく使われるでしょう。
その教師は曖昧なアドバイスをしているみたいで、なんでそんな人が有名なのかわかりません)

 
No, it isn't. "How are you?" is perfectly normal.
A quick Google finds this concerns a book by David A Thayne claiming to correct common English errors of native Japanese speakers.
As with many people who write usage guides, many of his ideas seem to be based on personal peeves and preferences rather than established usage. (後略)
(古くありません。"How are you?" は紛れもなく普通の表現です。
グーグルで調べてみたら、この質問は、日本人に共通する英語の間違いを直そうとするデイビッド・セインという人の本についてのものみたいですね。
言葉遣いについての本を書いている人にありがちですが、彼の意見の多くは、確立された言葉遣いというより、彼の個人的な偏見や好みに基づいているようです。)


(前略)Here in England we usually say "how are you". How are you doing is more American.
(イングランドでは普通"How are you"と言います。How are you doing はアメリカ英語です)

同様に、My name is ○○. が古いどうかも質問してみました(これ)。回答は5件寄せられ、すべて「古くない」という意見でした。


uh no
(古くない)

 
There is nothing "old" about the phrase 'My name is...."
("My name is ○○" は古くなどありません)

 
Nope. Not old. I use it sometimes when I want to clarify that it's my name I'm giving.
(いいえ、古くありません。名前を言っているんだと明確にしたいときには私も時々使います)

 
I don't think so it has its usage (in formal way)
(古いとは思いません。My name is には My name is の用法があります。(フォーマルな表現です))

 
There's nothing "old" about it!
(全く「古く」などありません!)

これらは匿名のネットユーザーの意見にすぎず鵜呑みにしてはいけませんが、セイン氏の意見を鵜呑みにしてもいけないと思わせるには十分ではないかと思います。

この『日本人のちょっとヘンな英語』には、前回紹介した以外にもいくつもおかしな点があります。例えばこれ。


この本では "I have free time tomorrow." が「明日なら無料の時間があります」の意味になると紹介しています。この本の言い方だと、まるで free time 自体が和製英語であるかのようにも読めてしまいますが、まず free time という表現は普通に使われるものです。辞書を引けばいくらでも出てきますし、日本の英和辞書だけでなく、オックスフォード英語辞典(ODE)やオックスフォード現代英英辞典(OALD)でも

She spent her free time shopping.

What do you like to do in your free time.

という例文が見つかります。また、have free time についても、OALDに

She doesn't have much free time.

という例文が載っています。もちろん "I have free time tomorrow." より some とか much とかをつけて "I have some free time." とか "I don't have much free time." などと言う方がよほど自然な英語ではありますが、"I have free time." が間違っている英語だとか通じないとかいうことはありえません。(一応Yahoo Answers でも聞いてみたら、全員「問題なし」という回答だった。)

もし have free time という表現が間違いなら、オックスフォードの辞書が間違っていることになってしまいます。この本はなんでこんな変なこと書いてるんだろう? オックスフォードより自分の英語感覚の方が正しいとでもいうのだろうか?

さらに私がこの本で嫌なのは、間違った英語を「教科書英語」と呼んでいるところ。


この "My friend is trouble." が間違っているというのは本当です。これは古いとか不自然とかそういう問題じゃなく、文法的におかしい。ですが、この英語を使っている女の子(上の "I have free time tomorrow." と同じ子)を、この本の表紙で「教科書英語ちゃん」と呼んでいるのです。


↑表紙

他にもこの子の英語間違いがいくつか載っていますが、この子を「教科書英語ちゃん」などと呼んでは、教科書に文法が間違った英語が載っていることになってしまします。そんなバカな。もし "My friend is trouble." なんて書いてある教科書が一冊でもあれば見せてほしい。

別に間違ってない "I have free time tomorrow."を間違い扱いして、教科書に載っているとは思えない "My friend is trouble." を教科書英語扱いするとは、教科書作成者に恨みでもあるのでしょうか?

教科書英語」とか「受験英語」とかの言葉を使って、それらを馬鹿にすると、きっとよく売れるのでしょう。学校で習った英語が身につかなかった人なら、「あんな英語は身につけなくてよかったんだ」という正当性を与えてもらった気分になれますし、権威を馬鹿にすることである種の優越感を得られますから。でも、そうやって日本人の英語コンプレックスを利用して売り上げを伸ばすために、間違っていない表現を間違ってるかのように言ったり、間違っている表現が教科書に載っているかのように言うのは悪意を感じます。

こんな個人の独善的な好みで "How are you?" や "My name is" や "I have free time."などの間違っていない英語まで間違っていることにして "How are you doing?" なんて砕けた表現を推奨する本より、普通に教科書を読んで勉強するほうが何百倍も役に立ちます。「オッス、オラ悟空」より先に「こんにちは。私の名前は悟空です」と言えるようにならないといけないでしょう。個人の経験で言わせてもらうと、教科書の英語や受験の英語を馬鹿にする人で、英語が話せる人を見たことがないです。

あと、さんざん「セイン氏は~」と言ってきていながら申し訳ないのですが、この本、本当はセイン氏のチェックを受けていないんじゃないかという気がしてきました。まず、このマンガで描かれているセイン氏の性格が悪すぎること。私だったら自分がこんな意地悪な性格に描かれているマンガにOK出しません。次に、いくらなんでも英語の「使える」「使えない」に関して誇張が過ぎること。それから、これは前回のエントリーでも書きましたが、あとがきとマンガの内容に大きなずれがあること。あとがきはまともなことを書いているのに、マンガの内容はその真逆を行くひどいものでした。この時点で、セイン氏と漫画家の間にコミュニケーションが成立していなかったろう推測はできてはいたんですよね。

そして、さらにはこんな英語が書かれていることに気づきました。


「デパート」は英語では department ではなく department store なんですよね。単なる誤植という可能性もなくはないですが、こんなでかい字で堂々と書いてあって誤植というのも考えづらい。

もしかしたら、セイン氏が出している『その英語、ネイティブにはこう聞こえます』という本を基に日本人スタッフだけで描いたから、こんなに変な内容のマンガになったんじゃないかと思えてきました。『その英語~』の方を読むと、もう少し解説があって、ここまでひどい内容にはなってないんですよね。

推測するに、『日本人の知らない日本語』というマンガが売れたから、二匹目のドジョウを狙ってセイン氏の本を使って似たようなマンガを出そうとして、日本人スタッフだけで作った結果、こういうわけわからん本ができたんじゃないでしょうか。そうなるとセイン氏には多少気の毒な気がしなくもないですが、この本自体がろくでもないことには変わりないです。

この本が30万部も売れているそうなので商売としては成功したわけですが、日本人の英語コンプレックスを利用して、学校の英語は間違ってるかのような印象を持たせて売る商法はもういい加減やめてもらいたいです。そして、インパクトがあって人が集まるからって、2ちゃんねるなどで本来の記事を改竄してまで広めるのは本当にやめてほしいです。「MANGA王国ジパング」は、まとめサイトへの転載を今後一切認めません。

というわけで、こういう本はせいぜい話半分にして、普通にまじめに勉強するのが一番いいと私は思います。

ではまた!

==ちょっと補足==

もしかしたら勘違いされている方がいらっしゃるのではないかという気がするので補足。

前回のこのブログについて「元記事作成者に対してまとめることのの許可を取っているのか」というコメントがありましたし、ごくまれにですが「翻訳系ブログ」という言葉を使われる方もいらっしゃるのですが、このブログはいわゆる「翻訳系ブログ」ではありません。

世間には「海外の反応系」とか「翻訳系」とか呼ばれるブログが多数存在しますが、このサイトは別にそういうサイトのまねで始めたわけではなく、私はこのサイトを始めるまでその手のサイトがあること自体を知りませんでした。このサイトは海外のサイトを翻訳しているのではなく、自分で購入した海外版のマンガやアニメなどの面白い内容を紹介するものです。

「海外の反応系」のまとめサイトなどにリンクされているためか、どうもイコール「外国のサイトを翻訳したサイト」と勘違いされる方がいらっしゃるようですが、そういうサイトではないので、そこはご理解いただきたく思います。

==追記==

やっぱりこの本セイン氏のチェックをちゃんと受けていない可能性が高いんじゃないかと思います。

読者の方に教えてもらったこういうブログで、私が批判したような内容は書かれてしまっているんですが、そこにセイン氏の協力者を名乗る人物のコメントがついていました。

I actually work for the guy, and helped edit the book. I agree with most of the points about the book, though not so much with the attacks on the "author's" character. Truth is, he knew the book was really a collection of nit-picking and half-truths, as did I and several of the other staff. But, he didn't write it, and he didn't publish it. The publishing company written on the spine of the book did. They essentially came to him with the book already written, and asked him to check it and put his face on it. Clearly not the best call, but if he hadn't, someone else would've, and the book would've still been published. Not saying this to justify what was done, but rather point out that the problem is on an industry level, rather than an individual one. Discovered this first hand when I sat in on a meeting with the publishers, raised several objections to the content in the book, and was never invited back, ever, to any publisher meetings. Okay guy; not-so-okay industry.

これが真実だと、出版社(アスコム)はすでに書き上がった本を持ってきてセイン氏に許諾を求めてきたらしいです。アスコムはすでに何冊かセイン氏の書籍を出版している会社なので、セイン氏も強く逆らえなかったのかもしれません。

さらには、この協力者がこの本の企画会議の段階でこの本の内容に文句をつけたら、次から会議に呼ばれなくなったと言っているので、もしこの自称協力者の言っていることが真実なら、悪いのは出版社ですな。なんたるヤクザな商売。もちろん最終的に許諾した以上セイン氏にも責任はあるんですが、ちょっと悪いことをしてしまいました。

というわけで出版社さん、売れるからってこんなアコギな商売はやめて、誠実な仕事してください。

ではまた。


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↑こっちもお薦め。


↑こちらもお薦め。will と be going to の違いなど、かゆいところに手が届く本。


↑恐らく今回紹介した本のインスパイア元。こっちは超オススメ。

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