英語のセリフをさらに「英」訳!? こだわりの北米版『映画 けいおん!』

イギリス英語とアメリカ英語は、お互い通じますが、結構違うみたいです。発音もそれなりに違いますし(例えば schedule をアメリカ人は「スケジュール」、イギリス人は「シェデュール」と発音します)、center と centre、color と colour などの綴りの違いは学校で習った人も多いと思います。 『イギリス英語Total Book』という本によれば、アメリカでは Do you have a pen? と言うところをイギリスでは Have you got a pen? と言い、野菜はアメリカでは vegetable でイギリスでは green になり、pants はアメリカではズボンを意味しますがイギリスでは下着のパンツを意味するそうです。他にも細かい違いを挙げて言ったらきりがないでしょう。

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まあイギリス人に vegetable と言っても100%通じますし(通じなかったらアメリカ映画見られないもんな)、現地で暮らしでもしない限り、日本人が気にする必要はめったにないと思うんですが、インフォーマルな表現ではイギリスでしか通じない表現、アメリカでしか通じない表現というのもたくさんあるようです。東京弁と大阪弁くらいの違いでしょうか? やっぱりフィクションの世界でも、東京人は東京弁を、大阪人は大阪弁を、アメリカ人はアメリカ英語を、イギリス人はイギリス英語を話すくらいのリアリティは欲しいものです。(余談ですが、大阪を舞台にした、管理人が大好きなアニメ『じゃりン子チエ』の声優は全員関西出身らしい)

というわけで、今回ご紹介するのは北米版『映画 けいおん!』です。北米版では日本版にないちょっとしたこだわりがありました!


↑北米版『映画 けいおん!』BD。日本のデッキでも再生可能

さて、『映画 けいおん!』では、おなじみの唯たち軽音部の5人が卒業旅行でロンドンに行きます。日本語版でもイギリス人のセリフはすべて英語でネイティブスピーカーに演じてもらっているんですが、北米版ではわざわざその英語のセリフを書き直して、声を入れなおしています。なんで英語のセリフをわざわざ書き換えて吹き替えしなおす必要があるのか最初わからなかったのですが、どう書き換えられてるかちゃんと聞いてみたらよくわかりました。イギリス英語に書き換えているのです

まずロンドンについて、ホテルでチェックインしようとするシーン。


日本語版
北米版
You've reserved the Ibis Earl's Court.Your booking is actually over at the Ibis at Earl's Court.
Yes.
This is the Ibis London City.
We have many locations throughout London.
Correct.
This here is the Ibis London City.
We have a number of locations throughout the London area.

1つ目のセリフで、日本版では「予約する」に reserve が使ってありますが、北米版では booking が使ってあります。辞書を引くと、「予約」の意味で booking を使うのはイギリス英語なんだそうな。

また、イギリス英語とアメリカ英語では r の発音が違うのが有名なのですが(アメリカは巻き舌でイギリスは巻かない)、北米版のフロントのセリフは correct, here, number, area といった r を含む単語を入れることで、イギリス英語っぽさを(少々強引に)強調しようとしているように思います。

というのも、次のあずにゃんとムギのセリフはこのように変更になったからです。



日本語版
北米版
あずにゃん:ムギ先輩、何て?

ムギ:速いわ…
Azunyan:I don't get her accent.

Mugi: Me neither.

あずにゃんのセリフが英語が速くて聞き取れないのではなく、 "I don't get her accent." つまりイギリス英語だから理解できないというセリフになっています(この get は「理解する」で accent は「方言」「訛り」「発音」の意味)。まあ、そりゃ英語吹き替え版でずっと英語を話してるのに、「速くて聞き取れない」じゃ視聴者に意味がよく伝わらないですよね。ホテルのフロントのセリフを少々わざとらしいくらいイギリス訛りにしたのはそのためでしょう。

特にセリフの変更が顕著だったのが寿司屋でのシーン。イギリス英語満載です。ロンドンの寿司屋に入って、そこの経営者に開店記念で演奏するためにやってきたバンドと勘違いされるシーン。ロンドン寿司屋経営者、めちゃくちゃイギリス訛りです。


日本語版
北米版
Hello.
You're the ones from Japan, right?
Hello.
You're the birds from Japan, right-o?.
I'm the manager of this establishment.
You're the ones who'll be performing today, correct?
I'm the governor of this establishment.
You're the ones who'll be songbirding today, right-o?

「日本から来た方ですね?」という最初のセリフで、北米版では唯たちを birds と呼んでいます。女の子を bird と呼ぶのはイギリス英語で、アメリカ英語にはないそうです。また、最後の right-o? も思いっきりイギリス英語。アメリカ人は言いません。「経営者」を governor と表現するのも、「歌う」「演奏する」というのを songbirding なんて言うのもイギリス英語です。

ここで唯はほとんど聞き取れていない設定ですので、このイギリス人のセリフは超わざとらしいくらいバリバリイギリス英語になっているわけです。女の子を bird と呼ぶのは、どうも日本語の「かわいこちゃん」「子猫ちゃん」「ベイビー」くらいの俗語らしいので、寿司屋の経営者が開店祝いにやってきてくれたバンドに対して言うとは思えないわけですが、まあその辺はマンガ的誇張なのでしょう。

放課後ティータイムの演奏を聴いた客の反応も、ちゃんとイギリス英語に直してあります。


日本語版
北米版
Wonderful.
That was a nice one.
That was brilliant.
Really blinding.

brilliant も blinding も、辞書を引いてみると褒め言葉で「素晴らしい」という意味で使うのはイギリス英語だけみたいです。アメリカでも通じるとは思いますけどね。

そして最後には、唯もイギリス英語を使います! 映画後半、イベントで演奏するシーンの唯のMC。


日本語版
北米版
ロンドンとても楽しかったです。
ベリー・インタレスティング
We had a blast here in London.
It really was the bee's knees!

blast はアメリカ英語で「とても楽しい事」の意味。the bee's knees は「とびきりいいもの」という意味のイギリス英語です。日本語版の唯は、まず日本語で挨拶してから、片言の英語で「ベリー・インタレスティング」と言っているわけですが、北米版ではまずアメリカ英語で挨拶してから、片言のイギリス英語でコメントを言っているわけですね。結構面白い翻訳と言えると思います。

ここまで唯たちはアメリカ英語を話して、イギリス英語が上手く理解できないという演出をされているわけですが、別に唯たちがアメリカ人設定に変えられているわけではありません。日本人のままなので、やはり少し無理が生じている場面もあります。

例えばロンドン寿司屋の前でマキちゃんに日本語で話しかけられるシーン。北米版では当然マキちゃんのセリフも英語に吹き替えられているので「ロンドンの町中で日本語で話しかけられちゃった」というのがよくわからなくなっちゃってるわけですが、その辺は「本当は彼女たちは日本語で話しているんだよ。文脈から理解してね」といううわけですね。英語吹き替えなのに "They are speaking Japanese." と言うのは、なんか変な感じ(^^)。やはりこういう英語と日本語が飛び交う映画を吹き替えで正しく理解するのは少々難しいですね。『ラストサムライ』の吹き替えなんて超わかりづらいし(DVDではボイスオーバーになってた)。


日本語版
北米版
律:
やっばい。わたし英会話できちゃってる。

澪:
でも、相手は日本語…。
Ritsu:
I think my English has really been improving.

Mio:
But they are speaking Japanese...

こんな感じで翻訳に無理があるシーンも少なくないんですが(残念ながら「あずキャットいて」は完全に無視して翻訳されてた)、翻訳者の苦労とオリジナルへの愛情が感じられる面白い翻訳でした。北米版BDは日本のデッキでも再生できますし、日本語・英語収録で日本版より安いので、興味がある方は是非見てみてはいかがでしょうか。

以前テレビシリーズの北米版についてレビューを書いた通り(記事はこちら)、声優さんの演技には非常に満足です。本当に日本の声に似ていて、楽曲のシーンは吹き替えでなく日本の声のままなのに違和感が全然ないです。最近の北米アニメ業界にこだわり方はすごいですよ。

ではまた!

おまけ

今回はロンドンに行く話だったので、イギリス英語とアメリカ英語という対比が翻訳に使われていました。その前にテレビ二期最終話で、唯たちが海外旅行のための英語を勉強するシーンがあって、唯がカタコトの英語を披露するのですが、それはこのように翻訳されていました。


日本語版
北米版
Where very delicious cake shop?
(ウェア ベリー デリシャス ケーク ショップ?)
Where tres yummy pastry café pour moi?
(ウェア トレス ヤミー ペイストリー カフェ プール モイ?)

tres (とても), café (喫茶店), pour moi (for me の意味)はフランス語です。そう、日本語版では片言の英語を話している唯が、英語版では片言のフランス語を話しているのです。(café は英語でも言うけどもともとはフランス語)

当然唯のフランス語はめちゃくちゃ。英語と混じっているうえに tres を「トレス」、moi を「モイ」と発音していますが、正しくはそれぞれ「トレ」「モア」と発音します。なんとなくアメリカ人がフランス語に対して持っているコンプレックスのようなものが垣間見える気がして面白いです。(そんなことない?)

というわけで、英語のセリフを英訳するのは大変だなあ、という話でした。みなさんも、もしこういう苦労して工夫している面白い翻訳を見つけましたら、コメント欄か掲示板で是非お知らせください。「日本語が登場する海外の映画の日本吹き替え版でこんな翻訳をしていた」みたいなものも大歓迎です。

ではまた!


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↑冒頭で紹介したイギリス英語とアメリカ英語を比べる本。CDには英語と米語の両方を収録。面白いっちゃ面白いけど、使い道が分からんと言えば使い道が分からん本。


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