カナダ人もびっくり! イタリアに『赤毛のアン』を広めたのは日本だった!
「世界名作劇場」といえば、今の子どもは知らないかもしれませんが、1975年から1996年まで日曜日の午後7時半に放送していた日本を代表する長寿アニメシリーズでした。『フランダースの犬』('75)、『母を訪ねて三千里』('76)、『あらいぐまラスカル』('77)など初期の作品が特に有名で、親御さんたちからも「子どもに安心して見せられるアニメ」として好評を得ておりました。
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私は「世界名作劇場」は基本的に好きなんですが、中でも『ロミオの青い空』('94)と『トム・ソーヤーの冒険』('80)が大好きで、特に『ロミオ』は舞台であるイタリア・ミラノやスイスの小さな村ソノーニョ村は私の初の海外旅行の地でして、この海外旅行無しには外国や外国語になど興味を持たなかったことでしょうから、私の人生に最も強い影響を与えた作品と言えるでしょう。(それにしてもソノーニョ村が実在していると知ったときには驚いたぜ…)

↑『ロミオの青い空』(左がアルフレド、右がロミオ)

↑ロミオの故郷、ソノーニョ村(で買った絵葉書)
また、『トム・ソーヤー』のトムの声は野沢雅子さんでして、本当にパーフェクトに合っていました。テレビの声優特番で野沢さんが出るといっつも悟空や鬼太郎の演技ばっかりで、野沢さんの声が一番あっていたキャラはトムだと思っている私としては『トム』の知名度の低さが実に残念なのでした。

↑『トム・ソーヤーの冒険』(左がトム。右がハック・フィン)
そんな「世界名作劇場シリーズ」ファンの私なので、海外版「名作劇場」もいくつか購入しております。ちょっとご紹介しましょう。

↑これまで購入できた「名作劇場」の海外版VHSとDVD
(並べてみたら、思ったよりも買ってるな…)

↑北米版『トム・ソーヤーの冒険』
『フランダースの犬』(劇場版) 『ふしぎな島のフローネ』

↑フランス版『トム・ソーヤーの冒険』

↑イタリア版『ペリーヌ物語』、『ロミオの青い空』
ドイツ版『アルプスの少女ハイジ』

↑台湾版『ハイジ』『フローネ』『ナンとジョー先生』
『ロミオ』『トム・ソーヤー』
(正直、正規品か海賊版か自信がない…)

↑韓国版『ピーター・パンの冒険』、『トラップ一家物語』『トム・ソーヤー』
『私のあしながおじさん』『フランダースの犬』(全て完結版)
厳密には『ハイジ』は「世界名作劇場」ではないのですが、ここでは『ハイジ』も名作劇場扱いしておきます。(どうでもいいけど、『アルプスの少女ハイジ』と打とうとすると『アルプスの少女は意地』と変換されてしまうぜ。そんなハイジやだな…)
さて、この「世界名作劇場」ですが、外国が舞台のわりに意外と海外で知名度がある作品は少ないようで、特に英語圏での知名度はほとんどありません。例えばアメリカでは『トム・ソーヤーの冒険』、『ふしぎな島のフローネ』、『愛の若草物語』、『フランダースの犬』(映画版)、『ハイジ』(映画版)くらいしか放送、出版されておりません。しかも、『若草物語』はクリスマスなどの数話分だけ。『フランダースの犬』の映画以外DVDも発売されていませんし、現在全て絶版ですので、上の写真の北米版のVHSは全てレアアイテムです。
北米のみならず、ヨーロッパでもさほど知名度がなく、例えば比較的「名作劇場」の浸透率が高いフランスでは『ハイジ』、『トム・ソーヤー』あたりは人気で今でもDVDが簡単に手に入りますし(上の写真のDVDも簡単に手に入った)、なんか『小公女セーラ』がメチャクチャ人気を得たらしく、その事実は『のだめカンタービレ』でもパロディが描かれていましたが、『ラスカル』、『ロミオ』、『名犬ラッシー』は放送されていませんし(『名犬ラッシー』は放送した国が世界でもすごく少ない)、何よりフランスを舞台にした『ペリーヌ物語』は放送されておりません。未確認情報ですが、なんでもアニメスタッフがフランスの資料がなかったためにドイツの資料を使ってしまい、フランスのはずの町並みがドイツの町並みになっているから放送しなかったとか…。本当か、それ?
さらにイギリスでは現在までのところ、一作品も放送されておりません。名作劇場関連本で、イギリスで『ピーターパンの冒険』が放送されたと書かれているものがありますが、どうも誤情報と思われます。もし本当に放送されていたという情報をお持ちの方はご連絡ください。
もちろん国によって多少の温度差はあるものの、「世界名作劇場」はそのほとんどが欧米を舞台にしているというのに、意外と欧米での知名度は低いようです。(「『世界』名作劇場」と名乗っていながら、欧米豪の作家以外の原作は一つもないんだぜ!(『七つの海のティコ』はアニメオリジナルなので例外))
しかし、ヨーロッパで(多分)唯一「世界名作劇場」を全て放送した国があります。それが


イタリア!
そう、我らがイタリアです。
もちろんイタリアでも作品によって人気度はまちまちで、例えば『トム・ソーヤー』は『Tom Story』というタイトルで放送はされたのは間違いないのですがVHSもDVDも全く発見できませんし、『ロミオの青い空』もVHSは2巻までで刊行が止まってしまいました。(なので上の写真の『ロミオ』のイタリア版VHSは超レアアイテムです)
さて、こっからが今日の本題。(長い前置きだった)
そのイタリアで特に人気を得た作品がこちら。

『赤毛のアン』!
高畑勲監督が、原作を読んだけど理解できなかったために、独自解釈を入れることが出来ず、原作を変えまくる「名作劇場」としては異例にも原作どおりの展開をして、それが逆に評価に繋がったこの作品。(名作劇場は『ふしぎな島のフローネ』や『家なき子レミ』みたいに、主人公の性別まで平気で変える。「名作劇場」のほとんどは、ストーリーの半分くらいアニメオリジナルだ)
宮崎駿が参加していたにもかかわらず、途中で「アンは嫌いだ」と言って去っていたこの作品。(余談だけど、宮崎駿は『アン』を去っていった後で『カリオストロの城』の製作に乗り出す。また、アンのオーディション最終候補に島本須美がいたことが、後に『カリ城』や『ナウシカ』で宮崎駿が島本須美をヒロインに起用するのに繋がっている)
ファンから愛されてる割に、スタッフからあんまり愛されていない気がしますが、まあ、とにかくこの『赤毛のアン』が「名作劇場」の中では、イタリアで特に人気を得た作品になったわけです。
その『赤毛のアン』ですが、このタイトルは日本でのみ通用するタイトルです。これは、日本の村岡花子の邦訳の際につけられたもので、原作のタイトルは 『Anne of Green Gables』(緑の切妻屋根のアン)です。Green Gables とはアンが住むことになる家のことで、アニメでもしょっちゅう「グリーン・ゲイブルズのアン」という台詞が出てきていましたね。
なので、外国で『赤毛のアン』なんて言っても通じない…というのが、これまでの日本の『アン』ファンの常識でした。
しかし、このイタリア版『赤毛のアン』のタイトルを見てください。

『Anna dai Capelli Rossi』
Anna はイタリア語でアンのことです。(しかし、この名前だと「最後に e があるアンで呼んでください」という台詞がこまっちゃうぜ…) dai は「~の」。 capelli は「髪」。 rossi は「赤い」。なので、意味は「赤毛のアン」です。イタリア版アニメでは、原作の『Anne of Green Gables』ではなく、日本のアニメの通りのタイトルをつけていました。
まあ、ここまでだったら「へ~、それで?」くらいのものなんで、私も別に驚きゃしないんですが、問題はイタリア版の原作本。下の写真は、日本のアニメは関係ない、モンゴメリによる原作の "Anne of Green Gables" のイタリア語版です。そのタイトルは…

『Anna dai Capelli Rossi』
これ見てわたしゃおったまげたよ。なんと、原作本のタイトルが、イタリアでも『赤毛のアン』なのですよ! これまで『赤毛のアン』は日本だけのタイトルと思っていたのにさ。
私がこの衝撃の事実を知ったのは、何年か前(たしかもう5年くらい前じゃないだろうか?)に名古屋駅でやっていた「赤毛のアン展」に偶然行ったときでした。そこに様々な外国語に翻訳された『赤毛のアン』が展示されていたんですが、イタリア版の翻訳本を見て驚愕したわけです。いやー、5年越しでようやく人に話せた。満足♥
今回、他の訳本も何冊か調べてみたら、全て『赤毛のアン』でした。


↑イタリア版の別の訳本。どちらもタイトルは『Anna dai Capelli Rossi(赤毛のアン)』
もうちょっと詳しく調べてみましたら、イタリアで『アン』のアニメの放送は1980年。イタリアで初めて原作の翻訳が出版されたのは1981年だったようです。つまり、アニメの『アン』の人気を受けて原作本が翻訳出版されたけれど、その際に人気だったアニメ版のタイトルである『赤毛のアン』を原作にもつけた、ということだと思われます。一応『Anne of Green Gables』の直訳である『Anna dei Tetti Verdi』という訳本もあるらしいですが、そのタイトルはどうも一般には全然浸透していないようで、現在見つかるイタリア語の原作本は全て『Anna dai Capelli Rossi』になっていました。
ちなみに、一番下の画像のイタリア版のタイトルは『La vera storia di Anna dai capelli rossi』(赤毛のアンの本当の物語)。これの出版は1990年。わざわざ「本当の物語」なんてつけてるところを見ると、おそらく原作ファンが、「アニメばっかり有名だけど、こっちが原作なんだぞ!」という意味でつけたタイトルなんだろうなあ、と推測できます。「本当の」と書いて「こっちが原作なんだ!」と主張しているところに、逆にアニメ版のイタリアにおける強い影響力が感じられます。
とにかく、日本の世界名作劇場版『赤毛のアン』の影響から、イタリアでは原作本のタイトルまで『赤毛のアン』になってしまうというポロロッカ現象が起きていたのです。日本のアニメの影響力、パねえ! モンゴメリも村岡花子もビックリしていることだろう…。
モンティ首相、さっさとイタリアの経済を立て直して、日本のアニメを買いまくってくださいね。
「MANGA王国ジパング」では、今後も日本人が知らない日本のアニメの力を伝えていきます!
ではまた!
おまけ
「世界名作劇場」の影響力をもう一つ。
2003年に宝島社から、こんな本が出版されました。(「名作劇場」ファンはこういうのも買うのだ)

『別冊宝島 私たちの好きなアルプスの少女ハイジ』
ここに、2002年にチューリッヒで行われた、原作者ヨハンナ・スピリの没後100年記念のシンポジウムの記事が小さく載っていました。それによると、そこで配られたパンフレットの表紙と会場前の看板のイラストが日本の『ハイジ』だったそうです。高畑勲監督もそこで講演を行ったそうな。

↑(同書21ページ)
さらに高畑監督によれば、『ハイジ』の本国スイスの学生が高畑監督に「ぼくらの国でもハイジと言えば、あの(日本のアニメの)ハイジですよ」と答えたのだそうな。
日本のアニメの影響力、マジ、パねえ。
追記
イタリアの他に、もう1ヶ国、韓国でもモンゴメリの小説のタイトルが『赤毛のアン』でした。

↑韓国版原作本。『빨간 머리 앤』とは『赤毛のアン』の意味
イタリアと同様にアニメ版の影響なのか、それとも原作本を訳すときに既に出版されていた日本語訳を参考にしたのか。どちらなのか、もしご存知の方がいらっしゃいましたら、是非お教えください。
==さらに追記==
なんだか、この記事これまで執筆してきた記事の中で一番反響が大きいぞ!? 1日で訪問数1万人超えたの初めてだわ。みんな、そんなに「名作劇場」好きだったの? だったら名作劇場の記事もうちょっと書こうかな…。
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↓欲しい商品をここで買っていっていただけたら、心から感謝。
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↑『ロミオの青い空』(左がアルフレド、右がロミオ)

↑ロミオの故郷、ソノーニョ村(で買った絵葉書)
また、『トム・ソーヤー』のトムの声は野沢雅子さんでして、本当にパーフェクトに合っていました。テレビの声優特番で野沢さんが出るといっつも悟空や鬼太郎の演技ばっかりで、野沢さんの声が一番あっていたキャラはトムだと思っている私としては『トム』の知名度の低さが実に残念なのでした。

↑『トム・ソーヤーの冒険』(左がトム。右がハック・フィン)
そんな「世界名作劇場シリーズ」ファンの私なので、海外版「名作劇場」もいくつか購入しております。ちょっとご紹介しましょう。

↑これまで購入できた「名作劇場」の海外版VHSとDVD
(並べてみたら、思ったよりも買ってるな…)

↑北米版『トム・ソーヤーの冒険』
『フランダースの犬』(劇場版) 『ふしぎな島のフローネ』

↑フランス版『トム・ソーヤーの冒険』

↑イタリア版『ペリーヌ物語』、『ロミオの青い空』
ドイツ版『アルプスの少女ハイジ』

↑台湾版『ハイジ』『フローネ』『ナンとジョー先生』
『ロミオ』『トム・ソーヤー』
(正直、正規品か海賊版か自信がない…)

↑韓国版『ピーター・パンの冒険』、『トラップ一家物語』『トム・ソーヤー』
『私のあしながおじさん』『フランダースの犬』(全て完結版)
厳密には『ハイジ』は「世界名作劇場」ではないのですが、ここでは『ハイジ』も名作劇場扱いしておきます。(どうでもいいけど、『アルプスの少女ハイジ』と打とうとすると『アルプスの少女は意地』と変換されてしまうぜ。そんなハイジやだな…)
さて、この「世界名作劇場」ですが、外国が舞台のわりに意外と海外で知名度がある作品は少ないようで、特に英語圏での知名度はほとんどありません。例えばアメリカでは『トム・ソーヤーの冒険』、『ふしぎな島のフローネ』、『愛の若草物語』、『フランダースの犬』(映画版)、『ハイジ』(映画版)くらいしか放送、出版されておりません。しかも、『若草物語』はクリスマスなどの数話分だけ。『フランダースの犬』の映画以外DVDも発売されていませんし、現在全て絶版ですので、上の写真の北米版のVHSは全てレアアイテムです。
北米のみならず、ヨーロッパでもさほど知名度がなく、例えば比較的「名作劇場」の浸透率が高いフランスでは『ハイジ』、『トム・ソーヤー』あたりは人気で今でもDVDが簡単に手に入りますし(上の写真のDVDも簡単に手に入った)、なんか『小公女セーラ』がメチャクチャ人気を得たらしく、その事実は『のだめカンタービレ』でもパロディが描かれていましたが、『ラスカル』、『ロミオ』、『名犬ラッシー』は放送されていませんし(『名犬ラッシー』は放送した国が世界でもすごく少ない)、何よりフランスを舞台にした『ペリーヌ物語』は放送されておりません。未確認情報ですが、なんでもアニメスタッフがフランスの資料がなかったためにドイツの資料を使ってしまい、フランスのはずの町並みがドイツの町並みになっているから放送しなかったとか…。本当か、それ?
さらにイギリスでは現在までのところ、一作品も放送されておりません。名作劇場関連本で、イギリスで『ピーターパンの冒険』が放送されたと書かれているものがありますが、どうも誤情報と思われます。もし本当に放送されていたという情報をお持ちの方はご連絡ください。
もちろん国によって多少の温度差はあるものの、「世界名作劇場」はそのほとんどが欧米を舞台にしているというのに、意外と欧米での知名度は低いようです。(「『世界』名作劇場」と名乗っていながら、欧米豪の作家以外の原作は一つもないんだぜ!(『七つの海のティコ』はアニメオリジナルなので例外))
しかし、ヨーロッパで(多分)唯一「世界名作劇場」を全て放送した国があります。それが


イタリア!
そう、我らがイタリアです。
もちろんイタリアでも作品によって人気度はまちまちで、例えば『トム・ソーヤー』は『Tom Story』というタイトルで放送はされたのは間違いないのですがVHSもDVDも全く発見できませんし、『ロミオの青い空』もVHSは2巻までで刊行が止まってしまいました。(なので上の写真の『ロミオ』のイタリア版VHSは超レアアイテムです)
さて、こっからが今日の本題。(長い前置きだった)
そのイタリアで特に人気を得た作品がこちら。

『赤毛のアン』!
高畑勲監督が、原作を読んだけど理解できなかったために、独自解釈を入れることが出来ず、原作を変えまくる「名作劇場」としては異例にも原作どおりの展開をして、それが逆に評価に繋がったこの作品。(名作劇場は『ふしぎな島のフローネ』や『家なき子レミ』みたいに、主人公の性別まで平気で変える。「名作劇場」のほとんどは、ストーリーの半分くらいアニメオリジナルだ)
宮崎駿が参加していたにもかかわらず、途中で「アンは嫌いだ」と言って去っていたこの作品。(余談だけど、宮崎駿は『アン』を去っていった後で『カリオストロの城』の製作に乗り出す。また、アンのオーディション最終候補に島本須美がいたことが、後に『カリ城』や『ナウシカ』で宮崎駿が島本須美をヒロインに起用するのに繋がっている)
ファンから愛されてる割に、スタッフからあんまり愛されていない気がしますが、まあ、とにかくこの『赤毛のアン』が「名作劇場」の中では、イタリアで特に人気を得た作品になったわけです。
その『赤毛のアン』ですが、このタイトルは日本でのみ通用するタイトルです。これは、日本の村岡花子の邦訳の際につけられたもので、原作のタイトルは 『Anne of Green Gables』(緑の切妻屋根のアン)です。Green Gables とはアンが住むことになる家のことで、アニメでもしょっちゅう「グリーン・ゲイブルズのアン」という台詞が出てきていましたね。
なので、外国で『赤毛のアン』なんて言っても通じない…というのが、これまでの日本の『アン』ファンの常識でした。
しかし、このイタリア版『赤毛のアン』のタイトルを見てください。

『Anna dai Capelli Rossi』
Anna はイタリア語でアンのことです。(しかし、この名前だと「最後に e があるアンで呼んでください」という台詞がこまっちゃうぜ…) dai は「~の」。 capelli は「髪」。 rossi は「赤い」。なので、意味は「赤毛のアン」です。イタリア版アニメでは、原作の『Anne of Green Gables』ではなく、日本のアニメの通りのタイトルをつけていました。
まあ、ここまでだったら「へ~、それで?」くらいのものなんで、私も別に驚きゃしないんですが、問題はイタリア版の原作本。下の写真は、日本のアニメは関係ない、モンゴメリによる原作の "Anne of Green Gables" のイタリア語版です。そのタイトルは…

『Anna dai Capelli Rossi』
これ見てわたしゃおったまげたよ。なんと、原作本のタイトルが、イタリアでも『赤毛のアン』なのですよ! これまで『赤毛のアン』は日本だけのタイトルと思っていたのにさ。
私がこの衝撃の事実を知ったのは、何年か前(たしかもう5年くらい前じゃないだろうか?)に名古屋駅でやっていた「赤毛のアン展」に偶然行ったときでした。そこに様々な外国語に翻訳された『赤毛のアン』が展示されていたんですが、イタリア版の翻訳本を見て驚愕したわけです。いやー、5年越しでようやく人に話せた。満足♥
今回、他の訳本も何冊か調べてみたら、全て『赤毛のアン』でした。


↑イタリア版の別の訳本。どちらもタイトルは『Anna dai Capelli Rossi(赤毛のアン)』
もうちょっと詳しく調べてみましたら、イタリアで『アン』のアニメの放送は1980年。イタリアで初めて原作の翻訳が出版されたのは1981年だったようです。つまり、アニメの『アン』の人気を受けて原作本が翻訳出版されたけれど、その際に人気だったアニメ版のタイトルである『赤毛のアン』を原作にもつけた、ということだと思われます。一応『Anne of Green Gables』の直訳である『Anna dei Tetti Verdi』という訳本もあるらしいですが、そのタイトルはどうも一般には全然浸透していないようで、現在見つかるイタリア語の原作本は全て『Anna dai Capelli Rossi』になっていました。
ちなみに、一番下の画像のイタリア版のタイトルは『La vera storia di Anna dai capelli rossi』(赤毛のアンの本当の物語)。これの出版は1990年。わざわざ「本当の物語」なんてつけてるところを見ると、おそらく原作ファンが、「アニメばっかり有名だけど、こっちが原作なんだぞ!」という意味でつけたタイトルなんだろうなあ、と推測できます。「本当の」と書いて「こっちが原作なんだ!」と主張しているところに、逆にアニメ版のイタリアにおける強い影響力が感じられます。
とにかく、日本の世界名作劇場版『赤毛のアン』の影響から、イタリアでは原作本のタイトルまで『赤毛のアン』になってしまうというポロロッカ現象が起きていたのです。日本のアニメの影響力、パねえ! モンゴメリも村岡花子もビックリしていることだろう…。
モンティ首相、さっさとイタリアの経済を立て直して、日本のアニメを買いまくってくださいね。
「MANGA王国ジパング」では、今後も日本人が知らない日本のアニメの力を伝えていきます!
ではまた!
「世界名作劇場」の影響力をもう一つ。
2003年に宝島社から、こんな本が出版されました。(「名作劇場」ファンはこういうのも買うのだ)

『別冊宝島 私たちの好きなアルプスの少女ハイジ』
ここに、2002年にチューリッヒで行われた、原作者ヨハンナ・スピリの没後100年記念のシンポジウムの記事が小さく載っていました。それによると、そこで配られたパンフレットの表紙と会場前の看板のイラストが日本の『ハイジ』だったそうです。高畑勲監督もそこで講演を行ったそうな。

↑(同書21ページ)
さらに高畑監督によれば、『ハイジ』の本国スイスの学生が高畑監督に「ぼくらの国でもハイジと言えば、あの(日本のアニメの)ハイジですよ」と答えたのだそうな。
日本のアニメの影響力、マジ、パねえ。
イタリアの他に、もう1ヶ国、韓国でもモンゴメリの小説のタイトルが『赤毛のアン』でした。

↑韓国版原作本。『빨간 머리 앤』とは『赤毛のアン』の意味
イタリアと同様にアニメ版の影響なのか、それとも原作本を訳すときに既に出版されていた日本語訳を参考にしたのか。どちらなのか、もしご存知の方がいらっしゃいましたら、是非お教えください。
なんだか、この記事これまで執筆してきた記事の中で一番反響が大きいぞ!? 1日で訪問数1万人超えたの初めてだわ。みんな、そんなに「名作劇場」好きだったの? だったら名作劇場の記事もうちょっと書こうかな…。


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この記事へのコメント
勉強になりました。
ハイジは再放送でみましたが、小公女セーラからロミオまで見てました。
小学校入学前から中学までずっとですね。
未だにオープニングとか耳にすると「あしながおじさんの歌だ!」とか気づきます。
あのアンの目がいつも未来に向かってキラキラキラキラ輝いてる感じがとても好きでした。それを表現する作画もすばらしい!
ロミオ、ナンとジョーも好きです。
海外で放送する日本アニメはこういうのだけにしてほしいです。今のエロと萌えアニメはほんとにアニメの印象を悪くしてると思います。
日本語に翻訳されたのしか翻訳していないと聞いたぞ 韓国
真偽はさだかではないがな
ご自分で調べて記事にする姿勢に好感を持っております。
これからも面白い記事を期待しています!
イタリアと言えば日曜の朝の子供タイムに、まどマギを放送し、よりによって放送側のミスでマミる回を二連続で流した国ですね。
もしかして漫画大好きで有名なフランスよりもアニメ好きな国だったりして
それはさておき、ハリウッド版のフランダースの犬のラスト改変だけはゆるせない
名作劇場を見ながら大きくなったといっても過言ではありません。良い時代でした。
題名にひかれてきたのですが、切り口が面白くて興味深い内容でした!!日本アニメを1番ひいきにしてくれる国はフランスだと思っていましたが、イタリアも侮れませんね!!びっくりでした~♪
世界名作劇場が欧米ではあまり放送されていなかったとはちょっと残念。欧米の文学が日本のアニメに影響を与え、それが今度は欧米にというコラボがあれば面白いと思ったので。
初めて知りましたw
アンシリーズは小説で10作品出ています、どれも素晴らしい作品です
モンゴメリさんが、人生をとして書き続けたこのシリーズは作者の愛に溢れています
アニメでは子供から淑女に変わるさなかのところで美しく終わりました
しかし、それは小説で10巻あるシリーズの1巻まででしかありません
まだシリーズを読んでいなくて、赤毛のアンを愛している人には是非小説版も読んで頂きたいです
子供を持ったアンなんて 想像するだに楽しそうじゃないですか?
そのころから嗜好がついてきて見るアニメを選ぶようになった
とか言い出すんじゃねーの(笑)
でも、「こんにちはアン」を最後になくなってしまいました。
この「こんにちはアン」は「赤毛のアン」の前日談みたいな話で、アンが生まれてからプリンスエドワード島へ渡る日までの物語です。
もっとも、これはモンゴメリの原作ではなくて、現代の作家(カナダ人?)による後付けの物語なのですが。
アニメ「赤毛のアン」の第3話あたりで、アンがマリラに自分の生い立ちについて語る場面がありましたが、基本的にはこれをふくらませたものです。
私は、この「こんにちはアン」をたまたまBSで見て大好きになって、「彼女のものがたりの続き」が見たくて「赤毛のアン」を見ました(笑)。
現代のハイビジョンアニメと違い、古い作品なので不安もありましたが、やはり、幸せな日常の物語と美しい手書きの風景は素晴らしいものでした。
アンがマリラに語ったように、プリンスエドワード島へ渡るまでの日々はとても幸せに満ちていたとは言えず、「赤毛のアン」とはちょっと違うのですが、彼女のかしこさや癇癪持ちの一面、自然を愛するこころ、取っ手の取れかかったカバン、茶色の帽子、ブラウニングの詩(世は全てこともなし)との出会いなど、「赤毛のアン」の物語をふくらませてくれると思うので、未見の方はDVDも発売されていますので、ぜひ視聴されることをオススメします。
その時の放送は、二ヶ国語放送で日本語と英語音声があったらしい
てか英語音声の赤毛のアンがほしいんだけど
日本のDVDには英語音声なんてないし、どうしたものか…
とか言い出すんじゃねーの(笑)
いや、それより「韓国がオリジナルで起源ニダ」「日本が真似したニダ。日本は真似するのよくないニダよ」と言いだすと思うなw
日本語版からの重訳が普通だったんだよねぇ。それも無断無許可で。
アンのエピソードは田舎の日常的なことばかり。それでこんなに読ませるなんて、モンゴメリの描写が非常に優れているのだと思った。
あれ、黒人が当たり前のように奴隷として描かれてる
アメリカで放送出来たってことに驚いた
できれば、赤毛のアン、ペリーヌ物語、小公女セーラ、愛の若草物語、愛少女ポリアンナのいずれかで頼む。
親がその作品の原作および続編小説を放送中に必ず購入してたので、それを読んでアニメと違ってたりしたのに驚いてたわ。
でもおかげで、原作や続編にも触れることが出来たから感謝してる
でもロミオは不遇というか、頻繁に放送が中断されていた記憶がある…
日本のパクリが韓国の全てだから
ラーメン吹いたわwwwww
やっぱ高畑勲が監督した「ハイジ」「三千里」「アン」は素晴らしい
見てたときはなにげなく見てたけど、大人になってみると感動が倍増する
「三千里」の作品クオリティはTVアニメで最高レベルだ
高畑勲、最後にもう一度だけ名作劇場を手がけてくれないかな~
(できればまた宮崎駿と組んでくれたら最高だけど絶対無理だろうな・・・)
とても充実した素晴らしいブログですね。
ちなみにわたしは赤毛のアンシリーズ全巻を3回通して読みました。こんなに素晴らしいシリーズは無い、と今でも思っています。
ペリーヌこそ至高!!
あの母親の『人に愛されたかったらまず自分から愛さねば』は
私の人生での大切な言葉です。
そんなの昔から赤毛のアン好きでプリンスエドワード島行ったり
ロンドンのベーカー街行くシャーロキアンいたじゃねーの、と思ったの
思い出しましたw
プリンスエドワード島は女性向けの絵本文芸誌でよく特集されてたなあ。
ロミオの頃は名作劇場から離れてたのに薄い本が出ていたのは覚えてる。
小公女セーラは髪と目の色が原作通りでしたね。
アニメから図書館の名作童話シリーズ読みに行きました。
親や先生以外から道徳を学べる貴重な番組だったよ。
私はポリアンナ物語が一番好きだったな。
今回の記事面白かった!
最初から最後までをいつもより時間掛けて読んだよ。
作中のバンドのビーハイブもイタリア人が結成して
今でも活動を続けていますね
カリ城であってるよ。コナンは78年。アンとカリ城の前年。
北米版DVDの入手方法を教えてくれ。
にのせられてたからでしょうな
でも興味深い話をどうもありがとう
ロミオ最近見てまたはまった
当時も好きだったけど 子供だったから
意味がまだ理解出来てなかったし
モンゴメリもびっくりからカナダ人もびっくりに?
まぁ、文学ではよくあることだから読書家のモンゴメリはびっくりしないわな。
描いて頂けたらなあと思います。
太陽の子エステバンとか名犬ジョリイとか好きだったので。。
よろしくお願いします。
みなさん温かいコメントたくさんありがとうございました。すこし返答を。
>>ラスカルのお皿欲しさにコンビニで点数を集め、アルフレドの死に号泣。
すごくよくわかる(笑)
>>北米版DVDの入手方法を教えてくれ
記事にもありますとおり、北米版の名作劇場はそもそもほとんど存在しませんし、現在全て入手不可能です。ネットオークションかアメリカアマゾンで中古を手に入れるくらいしか方法はありません。それも全てVHSです。(私もネットオークションとアマゾンで中古を手に入れました)
スカパーの「GLC24時間英会話チャンネル」で『アン』『トム』『ラスカル』は英語吹き替え版が放送されましたが、現在「のGLC24時間英会話チャンネル」自体が存在せず、全て入手不可能です。
なので、現在英語で入手可能な名作劇場の作品は残念ながら一つもありません。
>>タイトル変えた?
変えました
>>太陽の子エステバンとか名犬ジョリイとか
『エステバン』は北米版を持っていますが、なんか面倒で未視聴です。暇が出来たら見て記事を書きたいと思います。
>>「ペリーヌ物語」の時はさすがの名作劇場も人気が下降気味だったせいかな
『ペリーヌ』は4作目で、『アン』の1年前です。
>>その辺の有料記事よりずっと面白いです
ありがとうございます。
カルピスも忘れないであげて!
同属嫌悪ですね。
「ハイジ」も本では続編があります。別作家ですが、オマージュとして「その後のハイジ」中学生の時図書館で読んで以来、見つけられません。もちろんハイジはペータと結婚して、クララと遠縁だったことが発覚したりと面白かったです。
「不思議の島のフローネ」高校の卒業文集に、「無人島に取り残されるなら誰といsっよがいい?」の質問に「フローネのお父さん」で爆笑。お医者さんだし、木の上に家は作るし銃は撃てるしやさしいし、甲斐性あり杉。
「キャプテンフューチャ」「ジョリイ」「エステバン」
震災の時、みんな助け合えたのは「名作劇場」などの良質のアニメをみんな子供の時に見ていて、勇気や工夫、道徳などを自然に覚えてるからではと、個人的に思いました。
ひえ~! ご訪問ありがとうございます。ポルフィのキャラデザ、関修一さんなんかの名作劇場の雰囲気を踏襲しつつ、現代的な感じにもなっていて素晴らしかったです。
今後とも「MANGA王国ジパング」をよろしくお願いします。
何故か物凄い見入ってしまった思い出が、当時もう高校生だったのに
なつい
もっと簡潔に
名作劇場はは日本昔話と並んで何回でも再放送すべきだ。
とても気になることがあります。
BSフジで放送されていた分の世界名作劇場が他の国々で放送されていたか。
特に「こんにちは アン 〜Before Green Gables」がどうなっているかが気になるのですが。
何とかお教えいただけないでしょうか?
日曜夕飯タイムの世界名作劇場良かったですよね。家族で見られるし世界中の名作がわかりやすく見れますしね^^
また復活しなかなぁ
世界中の誰かの夫とか誰かの彼氏とか俺とかの
苦笑い率は異常
『コゼット』『ポルフィ』『こんにちはアン』の3作とも、イタリアでは放送されました。それぞれタイトルは
『コゼット』→ Il cuore di Cosette(コゼットの愛)
『ポルフィ』→ Il lungo viaggio di Porfi(ポルフィの長い旅)
『こんにちはアン』→ Sorridi, piccola Anna(笑って、小さなアン)
となっています。流石、イタリアは全て放送しております。Amo Italia!
他の地域はわかりませんが、私が放送を確認できたのはイタリアだけです。フランスでは3つとも未放送です。
野球中継のせいで33話で打ち切りだったからしょうがないかもしれないけど
原作はもっとダークだったのに・・・
すごいなイタリア、なんて国だ♪
教えていただき、本当にありがとうございました!
アニメDVDコレクション、羨ましい~!!
理解できないから原作通りに作ったというのは初耳でした。
なんかやたらと特番で中止された覚えがあります
DVDも、他のシリーズと比べて巻数が少ないような?
赤毛のアンは大人になってから好きになりました
原作を読んだら面白くて、昔途中で観るのをやめたアニメを見返すという…
管理人さんの記事を読んだら、名作劇場見たくなってきましたw
それにしても、日本の影響だとなれば日本の影響力がすごかったって事ですよね。
こんな小さな日本が今も昔も影響力を持っていたということは本当にすごいことだと思います。
ちょっと感動。
文章力もすごいけど、言葉のチョイスが素晴らしいと感心しました。
特に日本昔ばなしは再放送でいいから。
あのダイナミクスは凄い。
カリオストロの話が来たから降りざるを得なくなっただけ
嫌いなのは本当でしょうけど
宮崎さんがいなくなったあと、この枠のアニメの質ってがた落ちですよね
不思議な島のフローネを大人になってから見て驚きました
あまりにも子供だましで